メガバンクや地銀の事例を解説 銀行WEBサイトのアクセシビリティ対応調査
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銀行Webサイトのアクセシビリティ対応調査 メガバンクや地銀の事例を解説

みなさん、こんにちは。メンバーズルーツカンパニーの広報担当です。
今回は、金融サービスにも求められ始めている「Webアクセシビリティ」対応についての記事となります。そもそも「Webアクセシビリティ」とは何なのか。そして、メガバンクや地方銀行(以下、地銀)ではどのように対応しているかの事例もピックアップして紹介していきます。今後のWebアクセシビリティの方針を決める際の参考としてお役立てください。

Webアクセシビリティとは?

近年は金融に限らず多くのサービスでWebが活用されています。Webの開発やデザインなどを行っている方はすでに「Webアクセシビリティ」について取り組んでいるかもしれません。
そもそも「アクセシビリティ」とは、アクセスのしやすさを意味しており、これに倣って商品やサービスの利用しやすさという意味として使われています。今回取り上げた「Webアクセシビリティ」は、Webサイトを使うユーザーの年齢や障がいの有無、利用環境を問わずWebページの情報についての“理解しやすさ”や“操作しやすさ”という意味になります。
現在Webアクセシビリティの取り組みについて積極的に取り組まれている背景には、2024年4月から障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律「障害者差別解消法」の変更が影響しています。法改正によって商品やサービスを提供する事業者は、障がいのある人への合理的配慮の提供が義務化されました。

この法改正を受け、インクルーシブデザイン&エンジニアリング事業を手掛けるデザインスタジオ「CULUMU」が昨年10月に調査レポートを公開しています。全国100銀行のウェブアクセシビリティ『金融機関のアクセシビリティ対応状況 一斉調査レポート』にて対応状況を発表し、レポートの調査サマリーでは “今後は、地方銀行や信用金庫など、幅広い金融機関においても ウェブアクセシビリティの対応を進めていく必要があると言える” とWebアクセシビリティ対応について言及していました。レポート公開当時はメガバンクや一部の金融機関のみが対応しているとのことでしたが、現状のメガバンクや地銀の事例をチェックしていきます。

参考:内閣府 リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」
参考:CULUMUデザインレポート 全国100銀行のウェブアクセシビリティ「金融機関のアクセシビリティ対応状況 一斉調査レポート」

メガバンク(三井住友銀行)の事例

上記でお伝えしたように、すでにメガバンクではアクセシビリティの取り組みが積極的に行われています。今回はメガバンク3行の中でも特にわかりやすく方針や試験結果を明示していた三井住友銀行をピックアップしてみました。
三井住友銀行は「SMBCのアクセシビリティ」として、Webサービスのアクセシビリティに限らず、施設や雇用などアクセシビリティ全体について方針や取り組んでいる内容を合わせて1つのコンテンツとしてまとめていました。
ページ内には以下の内容が掲載されています。

SMBCアクセシビリティ方針

三井住友銀行では2005年より独自にアクセシビリティガイドラインを公開したことが記載されており、早い段階でアクセシビリティの向上に取り組んできたことが伝わってきます。また、Webアクセシビリティへの取り組みとして、最新のWCAG (Web Content Accessibility Guidelines、アクセシビリティに関する国際的な標準)を基準に検証を行い、継続的な改善を行っていることについても公表しています。

SMBCの取組

店舗やATMのユニバーサルデザイン対応について説明されています。ユニバーサルデザインは、あらゆる人々が利用しやすい製品やサービスとして対応するようにデザインされたものを指します。三井住友銀行では来店時の施設確認用ピクトグラム(言葉や文字を使わずに意味を伝える標識や案内)、点字ブロックの設置、視覚障がい者用対応ATM、筆談用のコミュニケーションツール、多言語対応サポートツールなど、店舗やATMでの取引時に利用できるものがあることについて説明していました。そのほか、障がい者雇用率、ユニバーサルマナーの教育(従業員が異なる文化や背景を持つ人々と関わるため、それらの人々の共通の礼儀や行動規範)などにも取り組んでいることが記載されています。

アクセシビリティ試験について【試験結果】

アクセシビリティ試験の対象とするWebサイトと目標とする適合レベル、対応度、例外事項が記載され、試験結果はリンク先で一覧にまとめられており、対象サイトを個別にチェックできるようになっていました。

アクセシビリティに関するご意見・苦情入力フォーム

最後にご意見・苦情入力フォームを設置することで、自行の取り組みを伝えるだけではなく、ユーザーからの意見を受け取れるような形式にしている所に顧客満足度の向上や信頼性の向上に取り組んでいる様子がうかがえました。

コンテンツページ全体から三井住友銀行のアクセシビリティに関する取り組み内容と、その状況についての説明や結果の具体的な数値も掲載しているところから企業としてアクセシビリティにしっかりと向き合い、ページの内容を通して企業への信頼性の高さまで伝わってくる内容となっていました。

参考:三井住友銀行「SMBCのアクセシビリティ」

地銀の事例

地銀ではメガバンクのようなコンテンツページは無かったものの、4月からの「障害者差別解消法」の改正を目前に控えていた3月にアクセシビリティ対応を表明する銀行が散見される傾向がありました。いくつかの地銀のWebアクセシビリティ方針についてご紹介していきます。

■北洋銀行

北海道札幌市に本店を置く北洋銀行では、Webサイトのフッターに「ウェブアクセシビリティ方針」へのリンクが設置されていました。
ページ内ではWCAG 2.1に対応することを目標としていること、対象範囲や例外事項、アクセシビリティチェック結果へのリンク、問い合わせ先やご意見入力フォームのリンクなどが記載されていました。Webアクセシビリティに対して網羅的に取り組んでいる様子が伝わるページの構成です。
また、目標達成期限を「2025年10月」として明記されており、目標を掲げるだけではなく、期限を持って取り組むことを伝えていました。

参考:北洋銀行「ウェブアクセシビリティ方針」

■池田泉州銀行

大阪府大阪市北区茶屋町に本店を置く池田泉州銀行も同様にWebサイトのフッターに「ウェブアクセシビリティ方針」へのリンクが設置されていました。
ページ内には対象範囲、目標とする適合レベルと対応度、例外事項、試験結果が表記されており、試験結果はページの中で一覧としてまとめられていました。また、現時点で把握している問題点と今後の対応方針について具体的な内容が記されており、問題点について修正対応を進めていく旨が伝えられていました。

参考:池田泉州銀行「ウェブアクセシビリティ方針について」

■京都銀行

京都銀行ではウェブアクセシビリティ試験は未実施でしたが、Webサイトのリリースとして「ウェブアクセシビリティ方針」を発表していました。
対象範囲や目標とする適合レベル及び対応度、スケジュールについても明記されているため、その内容に沿って対応していくことが理解できます。上記2行のようにWebサイトのフッターには組み込まれてはいませんが、対応内容が決定し次第リリースで公表することによって自行のWebアクセシビリティの方針を速やかに伝えていることが分かる事例です。

参考:京都銀行 当行ホームページの「ウェブアクセシビリティ方針」について

冒頭のCULUMUデザインレポートには、金融業界のトレンドとして、“アクセシビリティの対応をコンテンツ化し、顧客に発信している金融機関も増えてきており、対外的な発信の必要性は今後も増えてくる”という内容が記載されていました。今回ご紹介した地銀では、Webページのアクセシビリティ方針のみ表明していますが、三井住友銀行のように自行のアクセシビリティに関するすべての対応を1つのコンテンツとしてまとめたものを制作し、方針をアピールする方法を考案してみても良いかもしれません。このような対応はWebコンテンツの品質向上に寄与するとともにステークホルダーからの評価にも繋がります。Webアクセシビリティ方針について対応されていない地銀もまだ多い状況なので、参考にしてみてはいかがでしょう。

まとめ

今回はWebアクセシビリティ対応についてメガバンクや地銀の事例をご紹介してきました。
現在多くのサービスのデジタル化が進んでいますが、変化に富むVUCAな時代だからこそ多様なユーザーを想定し、アクセシビリティを考慮しながらアプローチしていくことが重要です。特に銀行サービスはあらゆる人々にとって身近な社会インフラであるため、Webアクセシビリティへの方針や対応が分かりやすくまとめられていることがユーザーからの信頼感を得るとともに社会課題の解決にも繋がっていきます。

これからさらに多くの地銀でWebサイトを活用が進み、コンテンツの追加や変更も活発に行われることが想定されます。定期的にサイトのWebアクセシビリティが保たれているかをチェックし、改善を繰り返しながら運用していきましょう。

今後も銀行業界のトレンドやDXの取り組みなどについてご紹介していきます。


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