中小企業は地銀のDX支援に期待 深い顧客理解でビジネス変革をサポート
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中小企業は地銀のDX支援に期待 深い顧客理解でビジネス変革をサポート

みなさん、こんにちは。メンバーズルーツカンパニーの広報担当です。
今回は、中小企業のDX推進状況の進捗調査と、実際にDX支援に取り組む地方銀行(以下、地銀)の事例紹介記事です。経済産業省が2018年に発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」から始まり、今も多くの企業がDXに関心を寄せています。しかしながら、積極的にDXに取り組む企業もある一方で、特に中小企業ではDXが浸透しにくい状況が続いています。その背景や地銀による支援のあり方について考えてみました。

地域との関わりが深い地銀に期待

経済産業省のガイドライン発表からコロナ禍を経て、日本全体がDXやデジタル社会の構築に向けて歩みを進めている最中ですが、現在、各企業の状況はどのようなものになっているのでしょうか。

東京商工リサーチの2023年8月に行われた「DXに関するアンケート」調査の結果によると、『DXに取り組んでいますか?』の問いに対して、『取り組んでいる』と回答した中小企業(資本金一億円未満)は40.6%という結果が出ていました。大企業が66.0%という結果であることから企業規模による差の開きが感じられるデータになっています。

さらに、DXに『取り組んでいる』『取り組んでいないが、必要性を感じている』と回答した企業のDX投資予算でも、中小企業は100万円~500万円の間を多数の企業が占め、500万円以上の割合は極端に減ります。これに対し、大企業は500万円~5000万円の予算である企業の割合が多くなっていました。資金力の差がDX投資の予算にも影響していることが見て取れます。

また、支援機関については、大企業ではITベンダーやコンサルタントを活用しているのに対し、中小企業は金融機関が42.6%と最も多い割合を占め、その他には商工会の利用も目立ちました。地域との関わり合いの深さや相談のしやすさも関係していると考えられます。

参考:東京商工リサーチ「DXへの取り組み、中小企業は4割にとどまる 予定なしも約2割 「生産性向上」目的が7割、中小企業は「金融機関」活用が最多」

中小企業の進まないDXの背景にあるものとは

ここからは、日本総研が2023 年5月に発表した「期待が高まる地方銀行による中小企業 DX 支援」の調査レポートを元に、中小企業が地銀に期待している役割や今後取り組むべき課題を探っていきます。

このレポート内にある、中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査」の結果を見ると、DXの取り組みの多くを占めているものが、“ホームページ作成”や“オンライン会議導入”、“顧客データ管理”など、単なるデジタル化に留まっているものが多い印象でした。IoT、AI活用やデジタル人材確保といった重要課題には注力されておらず、DXに取り組む目的である〈企業優位性を上げる〉という内容から少し離れたものになってしまっています。これは、重要課題に取り組んだとしてもすぐに効果や成果がみえないこともあり、短期的に成果が分かりやすく、比較的低予算なデジタルツールの導入などが中心になってしまった結果だと思われます。

また、国という単位で見ても日本にはデジタル人材が少ない、デジタル競争力が低いといった実情もあります。スイスの国際経営開発研究所(IMD)の「世界デジタル競争力ランキング2022」で、日本は29位という結果です。2018年は22位でしたが、少しずつランキングを落としています。このようなバックグラウンドからも、多くの中小企業がDXとしてやるべきことや重要性についての理解が不足している環境であることが伝わるのではないでしょうか。

参考:デジタル競争力ランキング

地銀は中小企業のサポートに適任

では、中小企業がこのような状態である時、支援者として期待されている地銀は何をすべきでしょうか。
このレポートでは、地銀に求められる取り組みの方向性を3つ取り上げていました。
「幅広い企業へのアプローチ」、「長期的なDX戦略策定のサポート」、「各企業の課題を踏まえた支援の提供」です。

そもそも、DXとして本来やるべき取り組みは、デジタル技術を用いて業務効率化をし、それによって新たなビジネスを創出することです。中小企業の現在取り組むDXは予算不足というだけではなく、経営陣の理解が得られないことも含め、DXの本質にまで踏み込めていないケースが殆どです。しかし、今後は本来の目的に向けた目標と中長期的な戦略を策定し、それに沿った運用体制を作り、着実に推進していくことが望まれます。

しかしながら、デジタル人材が不足しているというのは事実であり、新規ビジネスの創出のようなプロジェクトにはITの技術面だけでなく、自社ビジネスにも精通した人材も必要になってきます。
このような「技術+人材」の不足は中小企業だけで補うのは難しいからこそ、DX推進のサポート役には顧客のビジネス理解、技術のノウハウや人材についてのリソースを持っている地銀が適任です。地銀は地元に密着した機関であり、多くの中小企業との信頼関係も築いています。さらに近年は、銀行の業務範囲規制や出資規制が大幅に緩和され、幅広いビジネス展開が可能になりました。今後は資金支援に加え、コンサルティングやビジネスマッチング等の支援も行える状況が整っています。

そこで、支援を充実させるために地銀側の体制や強化するべき事は、企業ごとの異なる課題に対して最適な解決策を提案できる体制を構築する必要があるということ。そして、顧客理解の更なる深化が必要だとされています。DXの支援は、企業経営者や財務・経理面の理解だけでなく、現場への理解も必要です。仕入れや製造・営業・販売などの業務を通じて、顧客企業のビジネスをこれまで以上に深く理解していかなければなりません。

参考:日本総研「期待が高まる地方銀行による中小企業DX 支援 ~DX人材の強化とソリューションの多様化が急務~」

福岡銀行の中小企業DX支援事例

すでに支援事例を創出している地銀として今回ピックアップするのは、中小企業のDX支援に力を入れる「ふくおかフィナンシャルグループ」です。
過去の記事でも「DX銘柄2023(※)」に選出された実績を取り上げたこともありますが、店舗を持たない“スマホ専業銀行”「みんなの銀行」の立ち上げなど、DXの取り組みに積極的な地銀グループの一つです。また、DXの取り組みに経営陣が積極的に推進し、バックアップをしていることもさまざまな事例の創出に大きく影響しているようです。このようなDX推進の企業文化や風土があることはデジタルに強い地銀として差が付く部分にもなっています。

(※) 経済産業省、東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構が共同し、東京証券取引所に上場している企業の中から企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績がある企業を毎年選定している。

■デジタル化支援コンサルティング

ふくおかフィナンシャルグループは、2019年よりデジタル化支援を開始していました。
現在は、グループの3行(十八親和銀行、福岡銀行、熊本銀行)を合わせて40人余りがデジタル化支援の専任としてコンサルティング業務に従事し、わずか1年で400件を超える支援案件が決まっているとのこと。さらに、デジタル化の成熟度に分けた支援を行っており、「間接業務がシステム化されていない」という、成熟度の低い段階から重点的に支援を行っていました。次の段階は「業種別業務がシステム化されていない」、その次は「デジタルを活用した付加価値創造を目指したい」というように成熟度を3つに分けており、このステップを一足飛びにせず、段階的な支援が大切と考えているようです。また、経営資源が少ない企業の場合には、大きな初期投資が不要で定額で利用できるクラウドサービスを勧めるなど、支援先にとって最適なものを選定しながらデジタル化をサポートしていました。

参考:ダイヤモンド・オンライン「地銀の雄「ふくおかFG」が、中小企業のデジタル化コンサルに本腰を入れる訳」

■デジタル化支援サービス紹介ページ

福岡銀行はウェブサイトからも申し込みができる法人・個人事業主向けのデジタル化支援ページを開設しています。
実際にページを見てみると、課題を解決する2つのソリューション「ITツール紹介」と「コンサルティング」でタブが分けられており、悩みに合わせてナビゲーションしていく構成です。
「ITツール紹介」のタブでは、解決したい課題を軸に複数のツールが紹介されており、申し込みへの導線がひかれています。一方の「コンサルティング」のタブでは、どこから手をつけたら良いか分からない方向けのサービスのため、動画で事例などを紹介し、問い合わせができる構成になっていました。
このようなページを開設し、支援の入り口を設けていることも、福岡銀行がDXに課題を感じている中小企業に寄り添った支援を積極的に行っている様子が伝わります。

参考福岡銀行「デジタル化支援」

まとめ

地銀による中小企業のDX支援の重要性が伝わったのではないでしょうか。
人材やノウハウの不足等、自力での課題解決が難しいからこそ、中小企業は地銀のDX支援に期待しています。そして、地銀が中小企業のDX推進のリーダーシップを取っていくためにも、顧客と同じ目線で相手のビジネスを理解し、寄り添って行く姿勢が大切です。

これを地銀の一つの機会と捉え、どのような中小企業の困りごとにも対応できる体制を整え、顧客とともに自行のビジネスモデルの変革を目指していきましょう。

今後も地銀DXの潮流や取り組みなどをご紹介していきます。

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