地銀がリードするデジタルバンク事業 独自の事業モデルをリサーチ
ホーム > 地銀がリードするデジタルバンク事業 独自の事業モデルをリサーチ

地銀がリードするデジタルバンク事業 独自の事業モデルをリサーチ

みなさん、こんにちは。メンバーズルーツカンパニーの広報担当です。
今回は、近年増えつつある「デジタルバンク」について調査してみました。日本国内においては地方銀行(以下、地銀)がその存在をけん引していますが、一体どのような銀行なのか、デジタルバンクの設立や開発背景も含め解説していきます。

デジタルバンクとは?

この数年、「ネット銀行(インターネット銀行)」と同じようなニュアンスで「デジタルバンク」という形態の銀行が広まり始めています。「デジタルバンク」とはどのような銀行なのでしょうか。
現在、「デジタルバンク」という用語について明確な定義づけがされているわけではないようですが、一般的には、最新のデジタル技術を活用してサービスを提供し、実店舗を持たずにインターネットやスマートフォン上で取引が完了する形態の銀行という認識で広まっています。
そして、このような新たな形態の銀行が拡大している背景には、スマートフォンの普及、インターネット上の取引が盛んになって来たこと、デジタルネイティブ世代がターゲット層になったことなども挙げられます。さらに、新型コロナウイルスの流行で対面のやり取りが強制的にできなくなったことも、日本全体のデジタルチャネルの活性化、デジタルバンク拡大の後押しとなりました。

チャレンジャーバンク、ネオバンクとの違い

また、日本国内の銀行で聞くことは少ないものの、海外では「チャレンジャーバンク」や「ネオバンク」と呼ばれる銀行もあります。これらもデジタルバンクと同様に新しい形態の銀行です。
「チャレンジャーバンク」は、従来の銀行とは異なる新たな技術やアプローチでサービスを提供する銀行で、従来の銀行に対抗して競争力を高める性質を持つ銀行です。代表的なものはイギリスのMonzo、Revolut 、Atom、ドイツのN26などがチャレンジャーバンクにあたります。
それに対して「ネオバンク」は、完全にデジタル上で運営される新興の銀行です。代表的なネオバンクは、アメリカのChime、Aspiration、Current、Varoなど。これらも覚えておくとそれぞれのサービスの違いなども理解しやすくなります。

デジタルバンクに挑む地銀

では、実際に日本で事業展開をしている地銀傘下のデジタルバンクを紹介していきましょう。
日本のデジタルバンク事業については地銀が積極的に取り組んでいます。先ほど説明したネオバンクのように独自に事業を立ち上げて金融サービスを構築する形式ではなく、母体となる銀行があることも特徴の一つです。
そして、それぞれのデジタルバンクが設立に至った経緯やターゲット層などを見ていくと“強み”として打ち出しているものが異なることが分かります。今回は3つのデジタルバンクについて調査してみました。

福岡FG:みんなの銀行

ふくおかフィナンシャルグループのDXへの積極的な取り組み姿勢は、これまでに何度か取り上げてきました。過去記事「DX銘柄2023」新たな競争力に注目!デジタル時代を先導する地銀の取り組みにもあるように、日本初のデジタルバンクとなる「みんなの銀行」を設立するなど先進的な事例を次々に発表しています。

「みんなの銀行」は、2021年5月にサービスを開始しました。デジタルバンクのため、通帳やキャッシュカード、郵送物等の物理的なやり取りが発生せず、手続きは全てスマートフォンで完結。デジタルネイティブ世代をターゲットにしており、その世代の価値観に沿って設計されていることが感じられるデザインや機能が搭載されています。
また、“ネット銀行”との相違点として、システム面を含め、銀行のコピーではないことを頭取の永吉健一氏も語っていました。既存の銀行の延長線上ではなく、ゼロベースのデジタルバンクを新設するという取り組みそのものがグループ全体のDX推進にも繋がっています。
そして、スピード感ある事業を実行するために開発手法はアジャイル開発を起用。銀行は基本的にウォーターフォールで時間をかけて開発を進めていきますが、時間をかけた開発の全てが上手く行ったわけではなかったこともアジャイルを採用する理由になったようです。
さらに、銀行の3大機能の「1.金融仲介 2.信用創造 3.決済」を、新・3大機能として「1.価値仲介 2.信頼創造 3.決裁」に再定義し、「2.信頼創造」に関わる審査についてデジタルバンクならではの審査システムを導入していました。これまではクレジットカードの返済遅延等の過去の情報を参考にしていたものから、AIなどを活用し、ユーザーの過去データにとらわれない与信へと変更。現在から未来を予測した信頼性を担保に融資を行なっています。
デジタルバンクの在り方も含め、トップランナーとして挑み続ける姿が感じられる事例です。

参考:株式会社みんなの銀行「みんなの銀行」
参考:HIP:新常識に挑む「みんなの銀行」の戦略。ネット銀行と異なるデジタルバンクとは

東京きらぼしFG:UI銀行

2022年1月にサービスを開始した「UI銀行」は、東京きらぼしフィナンシャルグループの子会社として設立したデジタルバンクです。「長期にわたる低収益・高コスト体質から脱却するためのビジネスモデルの変革が急務だった」と東京きらぼしフィナンシャルグループの代表取締役社長 渡邊壽信氏が設立の背景を語っていました。
「UI銀行」も口座開設、預金、振込等のサービスのすべてがスマートフォン上で完結できるデジタルバンクです。デジタル化によって低減されるコストを預金金利の上乗せや為替取引手数料優遇として還元しつつ、首都圏160店舗のグループ店舗網を活かし、問い合わせに対面でも応じられる体制で手厚いサービスを提供しているのが特長です。これらの対応には同グループのきらぼし銀行が「UI銀行」の銀行代理業を担い、デジタルコンシェルジュ等の活用で新規顧客獲得やカスタマーサポートを支援しています。デジタルバンクでありながらも、あえて店舗で接客ができる窓口を活用するというのもグループ全体で見た戦略の1つと言えます。
また、システム開発については韓国でデジタルバンキングを展開している新韓金融グループの日本現地法人であるSBJ銀行と業務提携を結んでいたため、そのノウハウとシステムを活用することで短期間かつ、ローコストで業務システムが構築できたとのことです。

参考:東京きらぼしフィナンシャルグループ「UI銀行」
参考:payment navi:東京きらぼしFGのデジタルバンク「UI銀行」の目指す世界とは? 口座開設、預金、振込をスマホで完結

池田泉州HD:01Bank(ゼロワンバンク)

池田泉州ホールディングスがデジタルバンク「01Bank(ゼロワンバンク)」の準備を進めています。開業に向けて2024年2月1日に準備会社の設立が発表されました。
「01Bank」は、個人ではなく中小事業者向け融資をメインとするデジタルバンクです。融資額は1,000万円以内を想定し、24時間の申込受付やオンラインでの手続き完結、決算書不要で最短当日の貸し出しなどのサービスを提供していくとのこと。そして、コストを削減するために勘定系システムを保有せず、GMOあおぞらネット銀行から提供を受けたBaaS(Banking as a Service)を活用している点にも注目が集まっています。
また、融資の審査については「みんなの銀行」と同様に、過去の情報を基にしたものではなく、ビジネスの実態や成長可能性も評価して行う事業性融資の実現を目指しており、不動産などの担保となるものが少ないスタートアップの資金調達時には心強い存在となりそうです。融資における新たな取り組みは、クラウドファンディング事業者のマクアケなどのプラットフォーマーが持つデータを活用し、審査の差別化を図るとのこと。その際、プラットフォーマーが保持するデータからタイムリーに実態を把握、信頼性の高いエビデンスとして役立てていきます。現在約100社の法人向けクラウドサービス提供者と交渉を進め、さらに多くのプラットフォーマーとの連携を目指しているとのこと。
「01Bank」は、2025年3月末を目途に開業の準備を整え、認可が降り次第、事業を開始する予定です。

参考:株式会社池田泉州ホールディングス「01Bank 設立準備株式会社」
参考:日経xTECH:「勘定系レス」で始まる池田泉州HDのデジタルバンク、BaaS活用で初期投資20億円に
参考:ITmedhia ビジネスオンライン:マクアケのデータを使って融資を判断します 池田泉州HDがデジタルバンク「01bank」設立

まとめ

さまざまな社会インフラのデジタル化やDXが進んでいく中、銀行の事業モデルも着実に変革に向かっていることが感じ取れたのではないでしょうか。 また、デジタルバンクの開発にアジャイル型やBaaSを採用する地銀も増えてきました。スピーディーな開発が行えるようになったことで新たなサービスも誕生しやすくなり、デジタルネイティブ世代をターゲットにした挑戦ができる好機を迎えています。革新的なデジタルチャネルの活用を国内外の他行の事例などから学び、新たなサービス展開に反映してみてはいかがでしょう。

今後も地銀のトレンドやDXの取り組みなどについてご紹介していきます。


SHARE

このライターの最新記事

閉じる