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AIで進化する顧客コミュニケーション 銀行業務を効率化するAI活用事例

みなさん、こんにちは。メンバーズルーツカンパニーの広報担当です。
今回は、ChatGPTをはじめとしたAIの調査記事です。ChatGPTの公開から1年が経過したいま、銀行におけるAI活用の潮流はどのような状況になっているのでしょうか。銀行業務にAIを導入した事例をいくつか調査してみました。

AI活用業務の範囲は拡大中

OpenAIが2022年11月に公開した「ChatGPT」は、開発当初から話題を集め、現在も多くの業界で活用事例を創出しています。地銀DXlab.の2月の記事でも銀行のチャットボット活用事例を過去に調査していましたが、ChatGPTのようなAIは加速的な進化をしているため、チャットボットの会話のみならず、さまざまな業務にまで広がり始めています。生成AIは高度な学習機能が搭載されており、文章の要約やキャッチコピー制作、画像作成、通訳、プログラミング、データ抽出、投資アドバイスなど、生産性の向上に役立つ機能が驚くほど豊富です。活用範囲がどんどん広がっていく未来を多くの方が実感をもって予想しているのではないでしょうか。

銀行業界のAI活用事例

ここからは銀行業界における直近のAI活用事例を見ていきましょう。AIを導入し、運用する際に大事なポイントなども見えてくるかと思いますので、参考にしてみてください。

導入しやすくメンテナンス性も高い「審査AIサービス」

2023年12月より株式会社三菱総合研究所は、めぶきフィナンシャルグループである株式会社常陽銀行と株式会社足利銀行に「審査AIサービス」の提供を開始し、審査業務のDX支援をしていくことについて発表しました。
サービス開始前のテストにおいて「審査AIサービス」の判別精度は70%以上、平均応答時間は2秒以内という結果が出ており、殆どの案件について自動審査が可能になったとのこと。これによって自動化が不可能な案件に担当者の時間を割り当てることができるため、審査を行う銀行側とお客さまの両者にメリットのある仕組みであることが分かります。実際に審査業務を人の手で行う場合、24時間の稼働が難しいことや判定ミスが起きる可能性を考慮すると、機械的に判定を行えば安定したサービス提供にも繋がり、時間配分を必要な顧客に回すことで業務効率化が図れます。
また、「審査AIサービス」の特長としても取り上げられていますが、金融機関側のローン審査システムとの連携が小規模なインターフェースなどの改修で済むという点も、新システムとして導入する銀行側のハードルを下げるものになっています。さらに、金融機関ごとに独立した「審査AIシステム」を構築する場合も、AIモデルのモニタリングやメンテナンスが行いやすく、高い保守性を実現できるとのこと。システムとしての導入しやすさ、メンテナンス性の高さなどについても考慮されていることも、ツールの受け入れられやすさにつながることを感じさせられました。

今後は、サービスのさらなる高度化を図るとのことなので、業務プロセスの効率化が導入後にどれほど進んでいくのか注目していきましょう。

参考:PRTIMES「めぶきフィナンシャルグループで「審査AIサービス」の実務適用開始」

AI SaaSとデータ活用で効率化!「地域金融機関FAQプラットフォーム」

こちらは以前の記事でも取り上げた、株式会社PKSHA Communicationおよび 株式会社PKSHA Workplaceが展開するPKSHA AI SaaSの「地域金融機関FAQプラットフォーム」です。発表当時は、地方銀行(以下:地銀)6行がタッグを組んで、チャットボット向けFAQをAIで共有化し、業務効率をアップさせたという内容でした。その後、「地域金融機関FAQプラットフォーム」は、公開より1年半でAIチャットボットの活用量が約3倍になり、銀行向けのChatGPTの活用にも着手するなどさらに活用の幅を広げ続けています。

現在PKSHA AI SaaSは多くの銀行で導入され、47銀行のうち約半数の21銀行が「地域金融機関FAQプラットフォーム」を導入しているとのこと。PKSHA社の自然言語処理領域の実績と銀行におけるノウハウを活かした運用性の高いプロダクトであることが、この導入数からも感じ取ることができます。そして、使われたFAQのデータについても銀行固有の情報を省けば、共通のFAQとして多くの銀行で使える“データ資産”になっていることも証明されました。『データをどのように活用するか?』という課題もデジタル化を推進していく中では取り上げられる課題ではありますが、FAQを共通のデータに加工し、業務効率向上に貢献したデータ活用の好例といえます。

今後の展開として、PKSHA 社はWeb接客やスマートフォンアプリとの連携で新たな顧客接点を創出することなどにも触れ、AI SaaSの推進、銀行業界の先進的な事例創出を目指していくとのことです。

参考:PRTIMES「銀行業界のAI活用加速ーPKSHA AI SaaS導入銀行が47行を突破、地銀FAQプラットフォーム上のFAQ搭載数は350%増」

予測分析自動化AI「dotData」でターゲティング精度を向上

最新デジタル技術を積極的に活用する三井住友信託銀行にて、AIの活用によって業務変革を実現した事例です。近年デジタル化が進む中で課題となっているのがAIへの期待が高まるにつれて起こる「AI人材の不足」です。テクノロジーの進化や多様化するニーズに人材が追い付いていない企業も多く、AIを活用しても成果に必ずしも繋がるわけではなかったという実体験をもとに、このテーマに挑戦していました。

三井住友信託銀行は中期経営計画において「デジタル技術の活用」と「デジタル人材の育成」を大きな柱に掲げており、4つの戦略として「新技術への挑戦/データサイエンスの高度化と活用拡大/業務インフラの高度化/人材のリスキリング」に取り組んでいます。それらの取り組みの一つとして、個人顧客向け商品の営業活動をする際にAIを活用し、ターゲットリストの精度をより高める役割をAIに任せています。

すでに当行では2016年ごろからAIの機械学習を用いた統計ツールを試験的に導入していましたが、最初から活用できていたわけではなかったようです。優れたAIモデルを作成するために時間や高度なスキルを要することに気付き、ターゲットリストを継続的に高度化することは既存のAIツールでは難しいという課題を持っていました。それを解決するためにデータから隠れたパターン(特徴量)を自動的に発見可能にするという技術を搭載したAI「dotData」を導入。500万件に及ぶ大量のデータを分析にかけ、思いもよらぬ特徴量が抽出されることもあったそうです。その後、この情報をベースにした営業スタイルで成約率も上がり、現在はこのスタイルが定着しているとのこと。さらに「dotData」のメリットとして、データサイエンスの高度なスキルを持たない担当者でもAIモデルの構築が可能であることが語られており、結果として「dotData」による分析は営業力の底上げに繋がるものになっていました。

AIのような最新テクノロジーの導入をする際には、仕組みを作ったものの、現場に浸透させられず形だけのものになってしまうという課題は銀行だけではなく、多くの企業で発生します。現場の担当者自身がツールの使い方を理解し、使いこなせるものでなければ成果を出すことには繋がらないことが分かります。

参考: wisdom「VUCA時代に勝つDX戦略、三井住友信託銀行が実践するAI活用の勘所」

まとめ

AIの活用事例とともに、AI導入にあたって大事なチェックポイントもご理解いただけたのではないでしょうか。銀行業務においてもAIの活用範囲はどんどん広がっていますが、それと同時に最新テクノロジーの進化や変化に柔軟に対応できる組織や人材育成をしていくことも大切です。今回ご紹介した事例は、新たな仕組みを構築した際に適切な運用設計ができていたからこそ、成果に繋がったケースです。これらを参考に、自行にどのようなAIがあれば効率化が進むのか、そして、運用の際にはどのようなスキルが必要なのかなどについて考えてみてはいかがでしょうか。

今後も地銀のDXの取り組みや最新テクノロジーの導入事例などをご紹介していきます。

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