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【地銀DX戦略編】地方銀行・地方中堅企業におけるDX事例まとめ(2021年9月)

みなさん、こんにちは。メンバーズルーツカンパニーの広報担当です。

今回は、全国の地方銀行(以下、地銀)のDX戦略をまとめてみました。DXを“戦略的”に取り入れながら、顧客のニーズの発掘や業務の効率化をしている地銀、社員のデジタルリテラシー向上に努める地銀など、さまざまな取り組みが見られます。
それぞれの地銀がDXに何を求めているかの違いにも注目しながらご覧ください。

戦略的DXへと踏み出した地銀。中期経営計画を見据えた新たな施策に注目!

各地銀でDXが推進され、戦略的な業務提携やツールの導入が実施されていました。

デジタル化を進めるうえでインターネットの活用技術は必須であり、コンテンツ運用等で蓄積されたノウハウは大きな価値を持つものとなります。さらに今後はデータの統合・分析技術システムなどもサービスに差が付く要素となるため、DX推進の中で取り入れられるシステムとなるかもしれません。また、少しユニークな取り組みとしては、百五銀行の社員による本格的な業務アプリのノーコード開発研修というものもありました。

地銀それぞれの個性が感じられる取り組みですが、これらは地銀の中期経営計画にも基づいた内容となっているようです。

FinTech Journal:仙台銀行のDX戦略、地銀はフィンテックにどう取り組むのか

仙台銀行では、これまでの地方銀行のイメージを打ち破る、新たな取り組みを数多く実現しています。

全国各地の金融機関と連携したプラットフォーム「Sendai Big Advance」のスタート、SBIマネープラザとの共同店舗「仙台銀行SBIマネープラザ」の開設、子会社である仙台銀キャピタル&コンサルティングとの連携強化などです。

その中でも、SBIホールディングスとの業務提携を決断した理由は、インターネットをコアチャネルとした総合金融サービスを戦略的、かつ、総合的に展開している点が非常に素晴らしいと感じていたということ。多くのコンテンツを保持しているため、さまざまな分野でアドバイスが受けられる期待もあり、地元企業への本業支援を強化するためにも、連携相手のベストパートナーであると判断されたようです。

今後のIT・フィンテックの取り組みには「中長期システム開発方針」を掲げており、3つの基本方針と8つの基本戦略を設定。3つの方針は「顧客利便性向上」、「業務効率化」、「データの蓄積・分析・活用」です。8つの基本戦略は「モバイルファースト」、「コラボレーション」、「ATM合理化」、「システムの最適化」、「成長投資比率の向上」、「働き方改革」、「データ一元化」、「データ活用」。基本方針にある「顧客利便性向上」については、入出金や振込みの手続きは近い未来にスマホやタブレットだけで完結することが可能になると考えられ、3年から5年後の実現を想定し、取り組みを始めています。

さらに、未来に向けて注力すべきポイントを「1.事務からコンサルティング営業への流れ」、「2.IT・フィンテック・DXへの対応」、「3.ニューノーマル社会への対応」として、銀行業務の効率化と合理化を目指しています。

@Press:千葉銀行、仮想データ統合ツール「DYNATREK(R)」を導入 同行のDX戦略を推進するデータ検索基盤として利用を開始

千葉銀行ではDXによる抜本的なビジネス変革を進めており、株式会社ダイナトレックが開発・販売する仮想データ統合ツール「DYNATREK(R)」を導入。8月にデータ検索基盤として運用を開始したことを発表しました。

同行ではDXによる抜本的なビジネス変革を進めており、これはその一環として導入されたもの。「DYNATREK(R)」は、金融機関向けBIのトップベンダーとして、25の地域金融機関の全社的なBIシステムに採用されています。

また、システム導入の背景には、千葉銀行が千葉県ならびに東京都を中心に展開している大手地方銀行であり、2020年度からの中期経営計画において「金融機能の深化と地域金融の新たなモデル構築による、カスタマー・エクスペリエンス(CX)の向上」を掲げ、重要戦略の1つとしてDX戦略の強化を進めていたため。

今後の展開としては、現在、口座情報等の銀行保有データをもとに、お客さまの潜在ニーズを掘り起こすためのリストアップに取り組んでいるほか、お客さまのパーソナライズ化につながるカルテ画面の作成等を進めているとのことです。

ASCII.jp:百五銀行が業務アプリのノーコード開発研修まで踏み込んだ理由

三重県および愛知県を主な事業エリアとする百五銀行では、2021年度から、およそ2,200名の全行員を対象とする「デジタルリテラシー向上研修」をスタートさせています。

その背景には2019年度からスタートした中期経営計画「KAI-KAKU 150 1st STAGE『未来へのとびら』」があると、研修の責任者を務める若林夏樹氏は説明。なぜ地方銀行がこうした“一歩踏み込んだ”研修に取り組んでいるのか、研修を実施した成果などについて語っています。

まず、中期経営計画では、百五銀行が『デジタル&コンサルティングバンクを目指す』という長期ビジョンがうたわれていたということ。インターネットバンキングやバーチャル店舗といった、対外的なサービスのデジタル化だけを指すものではなく、行内の業務をデジタル化し、大幅に効率化することも含まれています。同行ではすでにRPA、BPRの導入によるビジネスプロセス改善に取り組んでいますが、こうした動きをさらに強化していく狙いがあるようです。

「デジタルリテラシー向上研修」は、大きく3つのパートで構成され、全行員を対象とするパート1の研修を経て、受講希望者のみを対象にパート2では営業成績管理アプリを完成させるという内容で参加希望者を募ったところ、およそ350名もの応募があったとのこと。応募者の多さに若林氏も「正直びっくりしました」と語っています。そして、パート3は、受講希望者から選抜したメンバーを対象に集合研修を行い、自身の業務に生かせるオリジナルのアプリを考案し、開発に取り組むというもの。若林氏は、受講希望者が多かったパート2、3の研修を再度実施するなどして、デジタル人材のすそ野をさらに広げていきたいとのこと。今後、半年から1年のうちには、本部業務の中で成果物を出したいという希望も熱く語っていました。

業務効率化に欠かせないDX! AIやアプリ活用で銀行業務をデジタルシフト

こちらは、地銀が業務効率化を目指して取り入れたDX推進の事例です。
福島銀行ではAIの実務導入を、りそなHDはすでに他の地銀とデジタル提携をしていましたが、さらに百十四銀行との提携を発表しています。

これらによって、ビッグデータ・AIによる言語化できなかった推測的情報を活用したり、アプリの活用がより積極的に行われていくことになります。顧客に対するサービスはデジタルで一層便利に、行員の業務もDXで支援していくスタイルへシフトしていることがうかがえます。

EnterpriseZine:福島銀行、DataRobotが開発したAIの実務導入を開始 東日本の地銀で

福島銀行は7月、エンタープライズ向け人工知能(AI)のリーディングカンパニー「DataRobot」のAIを実務導入したことを発表しました。これは昨年12月8日に発表した「SBIホールディングスとの戦略的資本業務提携」に基づき、SBIグループが資本業務提携する、地方銀行に対して提供されたプログラムの成果だとしています。

この取り組みを通してビッグデータやAIを活用することで、従来の知識や経験に頼った営業スタイルを高度化し、データに基づく多角的な視点によるDXを推進。個人向け融資において、言語化できない推測的情報をマーケティングに活用、顧客のニーズに即したタイムリーな提案が可能になったという事例も。
今後も「DataRobot」は、福島銀行に対し、引き続きAIネイティブな戦略的サクセスチームによる支援を行う予定です。

日経電子版:りそなHD、百十四銀行とデジタル提携

りそなホールディングス(HD)は9月7日、香川県の百十四銀行とデジタル分野で提携したと発表しました。

すでに、りそなは常陽銀行と足利銀行を傘下にもつ、めぶきフィナンシャルグループ(FG)や京葉銀行とも銀行アプリの導入などデジタル分野で提携しています。

今回の提携によって、りそなが手掛ける銀行アプリを提供するほか、支店での業務効率化が進められていく予定。また、りそながデジタル分野で提携するのは今回で4行目。地銀のシステム負担を減らし、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進を支援します。
今後は、りそなが自社の銀行アプリを百十四銀向けに新たに共同開発し、2022年度下期にも導入。

導入初年度には10万ダウンロードを目指すとのこと。さらに、店舗にはアプリの仕組みを取り入れたタブレットを設置し、後方事務を少なくする仕組みの導入も検討しています。

まとめ

今回は、それぞれの地銀が経営計画に基づいたDXを実現するために、どのような取り組みをしているかをご紹介しました。

戦略的な観点から提携を結んだ地銀、顧客サービスを充実させ、業務効率化を進めるための新システム導入、社員研修でのアプリ開発へ挑んだ事例など、その地銀がどの点においてDXを強化したいのかが伝わるような内容だったのではないでしょうか。今後も引き続き、各地銀のDXの取り組みの最新事例をお伝えして行きます。

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