みなさん、こんにちは。メンバーズルーツカンパニーの広報担当です。
今回は、企業でも取り組まれ始めているGX(グリーン・トランスフォーメーション)について、GXが注目される背景や理由、取り組むメリットなどを解説していきます。地方銀行(以下、地銀)のGX事例も紹介しますので、今後、GXの取り組みやDX推進の方向性を決める際の参考にしてみてください。
GXとは
GXとは、“グリーン・トランスフォーメーション”のことであり、温室効果ガスの排出を抑制し、従来の化石燃料を使用した火力発電から太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心とした産業構造へと転換する取り組みを指しています。
2023年5月には国会で「GX推進法」という法案が成立しました。正式名称は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」であり、脱炭素社会の実現に向けた理念や方策について定められています。
現在、世界規模で気候変動問題やエネルギーの安定供給の問題に取り組まなければならなくなっているため、GXは国際的な政策課題として取り組みが進んでいます。
参考:脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案【GX推進法】の概要
GXに取り組む背景と理由
注目を集め始めているGXですが、この発端は、2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択された「パリ協定」の影響が挙げられます。
ここで日本は『2030年度の温室効果ガスの排出を、2013年度を基準として26%削減』することを目標に掲げており、さらに2020年には当時の菅内閣総理大臣が『2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)を目指す』と宣言。国際公約の達成に向けて国を挙げて動かなければならない状況になっています。
このように、昨年5月の「GX推進法」成立以前から、気候変動問題の対策として脱炭素化や再生可能エネルギーを中心とした社会への転換が叫ばれています。
GXを取り入れるメリットと必要性
とはいえ、実際問題GXを実現するにはコストや人材も必要です。しかし、取り組むことによって投資家からの評価が上がり、資金調達の可能性を広げることにもつながります。それだけでなく、企業イメージの向上、競争力の強化、電力を最適化することによるコスト削減など、多くのメリットが得られます。企業の負担もありますが、新たなビジネスチャンスとして捉えることが事業の成功のカギ、持続可能な企業として踏み出していくことに繋がります。
また、GXに取り組む企業を後押しする活動も始まっています。2023年4月よりGX実現の施策として経済産業省は「GXリーグ」の活動を開始しました。「GXリーグ」は、GXに積極的に取り組む企業が、賛同企業の中長期の経営戦略・事業開発・研究テーマ開発などへの活用を目指し、業種を超えた対話や共創を推進するための自由な交流の場です。活動開始当時は、日本のCO2排出量の4割以上を占める679社が賛同を表明していました。そして、GXを総合的かつ計画的に推進するための戦略の1つである「成長志向型カーボンプライシングの導入」をすることで炭素排出に値付けをし、GX関連製品・事業の付加価値を向上。先行投資支援と合わせてGXに先行して取り組む事業者にインセンティブが付与される仕組みを創設しています。
このように、早期にGXに取り組むことにはさまざまなメリットがあります。環境保全の面とともに、今後の経済成長に繋いでいくためにも、銀行を含めた多くの企業が早い段階でGX実現に向けて取り組んでいく必要性があるのです。
GXとDXは切っても切れない関係
当コラムではDXの事例を取り上げてきましたが、実はDXもGXに全く無関係という訳ではないようです。 この理由ついては、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」でも説明されていますが、GXはDXと一体的に取り組んでいくことが推奨されています。
改めてDX(デジタルトランスフォーメーション)がどのようなものか振り返ってみると、DXは『デジタル技術を用いて業務フローを改善し、新たなビジネスモデルを創出することによって競争優位性を確立すること』です。簡単にいえば、インターネットなどを駆使して業務のデジタル化を進め、これまでの業務を組み直すことで効率化を進めるということです。そのデジタル化の中で、CO2削減や省エネルギーが実現されていくというのが、DXとGXの一体的な取り組みです。具体的な例を挙げると、この数年で広がりを見せたテレワークもその一つです。テレワークはオフィスの節電とともに自動車通勤を減らすことにもなるため、『業務効率化+省エネ/CO2削減』となり、DXでありながらGXに繋がる取り組みになっています。他には、オフィス内の資料のペーパーレス化、製造工場でデータ分析・活用による廃棄ロスの削減、AI予測による配送ルートの最適化なども温室効果ガス排出削減をするため、GXに貢献するDXといえます。
こうしてみると、GXとDXが近い関係にあることがお分かりいただけるのではないかと思います。GXを実践していくには、まずはAIやデジタル技術を導入することが必要であり、DX推進はGXの成功には欠かせない要素です。そのためにも、まずはDX推進を着実に進め、新たな仕組みの中で何が環境保護に繋がるかを見極めたうえで、GXの実現に繋げていくことが重要です。
デジタル技術を活用した地銀GX事例
すでに世界的な企業や国内の大企業においてはGXに取り組み始めており、事例も発表されています。
地銀の事例はまだ少ないですが、今回は滋賀銀行のカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みをピックアップしてご紹介します。滋賀銀行がこの取り組みをする背景には、滋賀県の第2次産業(製造業や建築業)における実態も影響していたようです。滋賀県は日本の中でも工業が盛んな地域であり、県内総生産に占める第2次産業の割合が高いということからもCO2排出量が地域に与えるインパクトが大きく、脱炭素化を推進しなければならない地域でもありました。
CO2排出量算出・管理サービス「未来よしサポート」
滋賀銀行では2023年1月より、CO2の排出量を算出・管理するツール「未来よしサポート」を活用し、顧客企業の脱炭素経営をサポートするサービスを開始しています。
このツールは、日立製作所が大企業を中心に提供している環境情報管理サービス「EcoAssist-Enterprise」をベースに、中堅・中小企業向けに機能や操作性を設計したクラウドサービスです。拠点ごとに専用のExcelシートへ情報入力することで、容易に会社全体のCO2排出量を可視化し、排出量の推移や削減目標の達成状況の把握、削減計画の管理ができます。
銀行がベンダーと共同開発した自社システムを活用し、取引先の脱炭素経営に向けた支援を行うサービスは、地銀として初の取り組みとのこと。脱炭素経営の入口から出口戦略までを一貫してサポートするという新しい銀行サービスとなっています。
参考:滋賀銀行と日立、CO2排出量管理で協業
参考:日立環境情報管理サービス「EcoAssist-Enterprise」
ファイナンスド・エミッションの算定高度化への取り組み
2020年2月に滋賀銀行は、国連の責任銀行原則に地銀として初めて署名しており、すでにSDGsやパリ協定に整合した銀行経営への取り組みを進めていました。そして、2023年10月、金融機関の投融資先の温室効果ガス排出量である、ファイナンスド・エミッションの算定高度化への取り組み開始も発表しました。
この背景には、気候変動への社会的関心の高まりや企業単体だけでなく、サプライチェーンの上流・下流を含めたカーボンニュートラルへの取り組みが重要になりつつあることも影響しており、金融機関はファイナンスド・エミッションを算定・分析するとともに、投融資先との対話や脱炭素関連商品・サービスの提供を通じたカーボンニュートラルの実現が求められていることを反映した取り組みとなっています。
参考:滋賀銀行 ファイナンスド・エミッションの算定高度化への取り組みを開始
まとめ
大量消費・大量生産の時代から循環型経済に移行していく中、銀行の社会インフラとしての役割も変遷し始めていることを感じ取っていただけたのではないでしょうか。
「地球温暖化」と「銀行」は、一見かけ離れた存在のように感じますが、地元企業の脱炭素経営の支援は、地域に根差した金融サービスを提供してきた地銀が率先して行うことによって後押しされていくと思われます。また、地球温暖化対策は、今後すべての企業に求められていくものとなり、概念を知るだけに留めず確実に実践していくことで企業イメージの向上にもつながります。さらに、GXはコスト削減というダイレクトなメリットや企業の存続、ひいては私たちの生活や社会全体を快適なものにしていく取り組みです。ご紹介した事例も参考に、DXとGXを確実に推し進めていきましょう。
今後も地銀のDX・GXの取り組みや最新テクノロジーの導入事例などをご紹介していきます。