みなさん、こんにちは。メンバーズルーツカンパニーの広報担当です。
今回は、これまでにローンチされた地方銀行(以下:地銀)やネット銀行などのDX施策の「その後」をリサーチしてみました。
ローンチ後の状況や金融サービスのDXはどこまで進化しているのか? 現状を見ていきましょう。
最新の金融デジタルサービスから地銀DXの今後を探る!
多くの銀行や金融サービスがさまざまな施策を打ち出してDX推進をしてきましたが、DX施策は続けるのが難しい一面もあります。継続的に価値を提供できてこそのDX施策といえますので、個々の事例を追ってみることで、実施されたDXが活かされているのかどうかが確認できます。
今回は、過去に地銀DX Lab. で取り上げた地銀のDX施策やローンチされたサービスの「いま」をランダムにピックアップしてみました。
千葉銀行:通帳アプリ
数年前より拡大していた非対面サービスも着実に定着し始め、サービスをアップデートさせ続けています。2021年3月、千葉銀行では新規口座の開設で紙の通帳を発行する際に1冊あたり1,100円の手数料を導入。これはスマートフォンで口座管理できる「通帳アプリ」の利用を促し、紙通帳にかかる経費を削減、デジタルサービス拡充につなげるための取り組みでした。
前回記事:地銀DX Lab. 「非対面チャネルで何を実現するか:地銀の先駆的なDX事例」
現在も機能を拡大させ続けており、2022 年 9 月より「ちばぎんアプリ」はApple Watch にも対応し始め、若年層やガジェット好きにもより定着させやすい形へと進化。そして、2023 年 2 月からは引落予定照会機能と入出金通知機能を追加しています。
参考:千葉銀行「ちばぎんアプリ」引落予定照会機能と入出金通知機能の追加について
伊予銀行: AGENTアプリ
伊予銀行といえば、昨年4月の「Gomez地方銀行サイトランキング2022」にて総合1位を獲得するなど、デジタルへの取り組みなども含めて地銀の中では特に注目度の高い銀行です。2019年には、タブレットアプリ 「伊予銀行 店舗受付AGENTアプリ」を各店舗に導入したことでグッドデザイン賞を受賞しており、タブレットを持ちだし「どこでも銀行」を実現。当時から“書類に記入して、印鑑を押す”そんな当たり前をなくしたいという想いを形にしており、デジタルを適材適所に取り入れつつ、過疎地域や来店しにくい高齢のお客さまへの展開も考慮していました。
過去記事:地銀DX Lab.「伊予銀行から学ぶ顧客体験の向上を軸としたDX戦略」
そして、既に現在AGENTの機能の範囲はタブレットからスマートフォンへと拡大。2021年6月にスマートフォンアプリがリリースされていました。ユーザーは、銀行口座の開設や住所・氏名・電話番号変更、キャッシュカードの発行と再発行、「Visaデビット利用明細照会」等の手続きをスマートフォン上で行うことが可能になっています。
参考:ビジネス+IT:スマホアプリは「移動店舗」に、伊予銀行のデジタル化への「本気度」
鹿児島銀行:キャッシュレス決済サービス「Payどん」
自行のキャッシュレス事業に積極的に取り組んでいた鹿児島銀行。2021年5月にサービス開始となっていたスマートフォン向け決済アプリ「Payどん」は、鹿児島銀行が独自に開発したスマートフォン向け決済アプリ。「ローカルな銀行がやっている安心感」を売りに取引先に営業し、2021年2月時点で加盟店は約5,500店舗を達成していました。
前回記事:地銀DX Lab.「地銀アプリがもたらす新たな価値:地銀の先駆的なDX事例」
そして、今年の3月より、鹿児島銀行のキャッシュレス事業に南日本銀行と鹿児島相互信用金庫が加わることになったとのこと。キャッシュレスの普及や地域内の資金循環の促進、10月の運用開始を目指し、県内の他金融機関にも事業への参加を呼び掛けていくそうです。2月末現在、「Payどん」の会員数は10万8048人、加盟店は県内1万919店舗。月間決済額は5億円を上回る水準となり、地域経済を活性化するために地銀同士がタッグを組み、サービスを一層強化していることがうかがえます。
参考:地方の金融機関が異例のタッグ…スマホ決済アプリ「Payどん」、南銀・鹿相信でも10月から利用可能に 開発者の鹿銀と合意 | 南日本新聞
ふくおかフィナンシャルグループ:「みんなの銀行」
新たなカタチの銀行として、店舗を持たない銀行も開業されていました。ふくおかフィナンシャルグループ傘下の「みんなの銀行」は、2021年5月にデジタルネイティブ世代をターゲットにした次世代のデジタルバンクとして開業しました。
前回記事:地銀DX Lab.「地方銀行・地方中堅企業におけるDX事例まとめ(2021年2月前半)」
そして、この取り組みが国内初のデジタルバンクであることが評価を受け、2022年6月に経済産業省、東京証券取引所および独立行政法人情報処理推進機構が共同で発表した「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」に選定されています。銀行のWebサイト(https://www.minna-no-ginko.com/)も、従来の銀行のイメージに捉われないスタイリッシュなデザインになっており、ターゲット層への受け入れられやすさも考えられていることが分かります。サービスもスマートフォンでの取引、カードレス、キャッシュレスに集約されており、新しい銀行のカタチを確立していました。
参考:株式会社みんなの銀行 「ふくおかフィナンシャルグループが 『DX銘柄2022』に選定、みんなの銀行を高く評価 」
百五銀行:デジタルリテラシー向上研修
デジタルに関して社内の取り組みを進めていたのは、百五銀行。2021年、全行員対象のデジタルリテラシー向上研修をスタートさせていました。
研修は大きく3つのパートで構成。ゲーム感覚で体験しながら学ぶイメージに合わせ、クラウド型学習システムの構築支援サービスを行うFIXER社とコラボレーションし、研修を始めたとのこと。そして、全行員を対象とするパート1の研修を経て、受講希望者のみを対象にしたパート2では営業成績管理アプリの制作、パート3は受講希望者から選抜したメンバーを対象に集合研修を行い、自身の業務に生かせるオリジナルのアプリを考案し、開発に取り組むという内容でした。
前回記事:地銀DX Lab.「【地銀DX戦略編】地方銀行・地方中堅企業におけるDX事例まとめ(2021年9月)」
2022年8月時点で実施した結果が発表されており、研修を通して世界全体のDX状況を知り、デジタル化を“自分事化”できたことから自由参加であったパート2の「ノーコード/ローコードでのアプリ開発」にも予想を超える350名が参加することになり、現在の行員のデジタルリテラシー向上につながっているようです。
参考:ビジネス+IT「なぜ百五銀行の「デジタル研修」は予想の7倍の参加人数を達成できたのか」
静岡銀行:SDGs推進
持続可能な開発目標として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)。今ではSDGsを経営に導入する企業も珍しくなくなりましたが、静岡銀行では2021年2月に、SDGsやESGに関する取り組みが積極的な中小企業への融資「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」も先駆けて導入していました。
前回記事:地銀DX Lab. 「地方銀行・地方中堅企業におけるDX事例まとめ(2021年2月後半)」
そして、今年の2月に静岡銀行と静岡県信用保証協会は、環境や社会などへの取り組みを表彰する環境省主催の「ESG(環境・社会・企業統治)ファイナンス・アワード・ジャパン」の間接金融部門で最高賞の金賞を受賞したことを発表。脱炭素、女性活躍、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの進捗を確認できる約50項目を設け企業ごとに宣言書を作り、融資や相談をきめ細かく実施したことが評価されたとのことです。
参考:静岡銀行「第4回「ESG ファイナンス・アワード・ジャパン」で「金賞(環境大臣賞)」を受賞! 」
まとめ
DX関係のリリースは、サービス開始について注目されがちですが、その中でアップデートを重ねて成長し続けているサービスもあれば、その陰でサービス終了となっていたものもあります。
成功と失敗、それぞれから学ぶものはありますが、今後必要とされるであろうサービスや機能に直感的に気づける感覚を磨き続けることも必要です。今回ピックアップした事例もヒントに、DX施策の進むべき道を探ってみてはいかがでしょうか。
今後もデジタルテクノロジーの潮流やDXに関する取り組みなどをご紹介していきます。