みなさん、こんにちは!フォーアドカンパニーの広報担当です。
今回は、広告のハウスエージェンシーを持つメガバンクや地方銀行(地銀)をピックアップしつつ、ハウスエージェンシーとは何か? どのような役割やメリットがあるのかについても解説していきます。銀行のマーケティングに関する取り組みが気になる方は参考にしてみてください。
広告のハウスエージェンシーを持つ銀行が増加
2021年11月の銀行法の改正により銀行が広告代理事業を展開できるようになり、その影響や変化について以前の記事(広告事業で変わる銀行!法改正で加速するDX推進・地方創生)でも取り上げていましたが、今回は銀行のマーケティング活動がアウトソース型からインハウス型へと移り変わり始めたことについて背景なども含めながら解説していきます。
これまで外部の独立した広告代理店が多くの銀行のマーケティング業務を担っていましたが、近年はインハウス型を導入し、銀行独自の「ハウスエージェンシー」として 特定の銀行に特化して 広告・マーケティング活動を行うようになりました。ハウスエージェンシーは、企業が広告代理店機能を子会社や部門に持たせて自社の宣伝を行う運営形態にしたものです。以前は「アウトソース型」として広告代理店へ広告に関する業務をアウトソーシングする傾向にありましたが、この数年、銀行ではハウスエージェンシーを設立 したり、社内のマーケティング部署を内製化する「インハウス型」が数を増やしつつあります。
最初に、ハウスエージェンシーを保持しているメガバンクや地銀をいくつかご紹介します。
■三井住友フィナンシャルグループ
株式会社SMBCデジタルマーケティング … 2021年7月に設立した株式会社電通グループとの合弁会社。事業内容は、データマーケティング・広告メディアの2軸で展開。
参考:三井住友フィナンシャルグループと電通グループが合弁会社、SMBCデジタルマーケティングを設立。広告・マーケティング事業を展開
■三菱UFJフィナンシャル・グループ
Bank Ads …2023年1月に株式会社サイバーエージェントと提携して立ち上げたMUFGグループのデジタル広告事業。グループ内の一部門として事業を展開。
参考:デジタル広告事業「Bank Ads」の設立と取り組み 金融データ×デジタル広告で創出する新しい価値
■みずほフィナンシャルグループ
株式会社東京アドエージェンシー … 1970年に設立。半世紀にわたりみずほフィナンシャルグループの商品・サービスにおけるプロモーション領域をメインにサポート。
参考:創業50周年のごあいさつ
■東京きらぼしフィナンシャルグループ
株式会社ビー・ブレーブ … 2022年6月、広告宣伝やプロモーション、マーケティングの伴走支援を担ってきた実績から株式会社ビー・ブレーブを子会社化。企業価値向上やデジタル化の推進に貢献。
参考:株式会社ビー・ブレーブの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
■福井銀行
株式会社ふくいのデジタル … 2022 年 9 月、地域のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を目的に株式会社福井新聞社と共同で設立。スマートフォンアプリサービス「ふくアプリ」事業やマーケティングリサーチ事業を手掛ける。
■しずおかフィナンシャルグループ
SFGマーケティング株式会社 … 2023年7月、株式会社電通グループとともに、しずおかフィナンシャルグループの連結子会社として設立。地域の課題解決と発展を支援。
参考:地域の課題解決と発展を支援する「 SFG マーケティング株式会社」を設立
みずほフィナンシャルグループのように長期間プロモーションを支援しているハウスエージェンシーを持つ銀行もありますが、近年設立したハウスエージェンシーでは広告代理店や新聞社との協業で設立するスタイルも見受けられ、設立にいたった経緯もさまざまであることが分かります。
ハウスエージェンシーが求められる理由や役割とは?
次に、近年ハウスエージェンシーが求められるようになった背景や役割について説明していきましょう。
2018年頃から今後の少子高齢化や労働力不足などの日本全体が抱える課題への対策として政府はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進してきました。その中でテクノロジーも発展し、多くの企業で代理店に委託せずに企業自ら広告運用を行うことが多くなりました。さまざまなツールやプラットフォームを駆使することで代理店手数料を支払わずに効率的な運用ができるというメリットに気付き始めたためです。
さらに、2019年末から数年にわたって世界的にコロナウイルスが流行し、さまざまな業界やサービスでデジタル化が後押しされていきました。コロナ禍の数年間によってデジタルテクノロジーにスピーディーに対応できるかどうかが企業の成長のカギを握る時代となったことを多くの方が実感したのではないでしょうか。また、世の中の潮流としてもデジタル化は避けられなくなっており、今後もデジタルテクノロジーは発展を続け、グローバル化や気候変動によるインパクトも大きくなるため、社会やビジネスにとって未来の予測が難しい状況は続いて行くと考えられます。
そして、このような社会構造の変化や新型コロナウイルス感染拡大の影響から2021年11月に改正銀行法が施行されました。ここで業務範囲規制の見直しが入ったことによって広告代理店事業への参入が可能になり、銀行も広告や宣伝ができるようになりました。しかしながら銀行は広告業務に関する専門知識や人材を保持していないため、銀行業高度化等会社を設立することで銀行が持つ強みを生かしつつ、広告業務の専門知識を取り入れることで総合的な競争力を高めていく戦略を採用しました。 現在、多くのメガバンクや地銀はマーケティングの機能を持たせた部門や子会社としてハウスエージェンシーを設立し、業務範囲を拡大しながら顧客に対して付加価値の高いサービスを提供するとともに銀行の収益にも貢献できるような仕組みを構築しています。
さまざまな社会課題へ立ち向かう臨機応変な対応力が必要とされる今、既存のビジネスモデルに依存しないハウスエージェンシーの役割に期待が高まっています。特に、時代の変化に柔軟に対応していくにはIT開発やデータ活用などデジタルに関する業務は外部委託のみでは立ち行かなくなるため、さまざまな業界で内製化志向が高まっています。このような理由からも今後はさらにハウスエージェンシーを持つメリットをより感じられる時代になるでしょう。
参考:株式会社野村総合研究所 金融高度化ワークショップ「広告媒体業の次は、銀行業高度化等会社による“広告代理店”化」
ハウスエージェンシーや内製化のメリット・デメリット
時代の変化に合わせ、銀行の広告やマーケティングに関する業務はアウトソース型からインハウス型へと移り変わり始めていることがご理解いただけたのではないでしょうか。では、ハウスエージェンシーや内製化した組織を持つことで具体的にはどのようなメリット・デメリットがあるのか確認してみましょう。
■メリット
【商品やサービスを深く理解している】
ハウスエージェンシーのクライアントである銀行とは深い関係にあるため、ハウスエージェンシーも銀行が扱う商品や銀行業務については外部の広告代理店より深く理解しているというのは大きなメリットです。例えばキャンペーンや広告を企画する際に、サービスに関する知識をインプットする時間を短縮できるため、前提知識を理解するまでに掛かる時間やコストの負担を減らすことができます。
また、内製化した組織が広告運用を行えば、最も商品を理解している社員がデータを活用することになり、より効果的な広告運用にも繋がります。
【スピーディーで柔軟な対応が可能】
外部の広告代理店を使わずにハウスエージェンシーや自社内で企画や運用ができるため、戦略や投資など決断までに掛かるコミュニケーションも短縮されます。さらに作業過程がブラックボックス化しないため、プロジェクトに関わるメンバーの事業理解も進みやすい環境となり、ノウハウを効率的に蓄積することもできます。また、想定外の出来事が起きた際にもスピード感をもって対応できます。
【コストパフォーマンスが高い】
外部人材を使わないで済むため人材に掛かるコストを抑えることができます。さらに、広告代理店に支払う運用手数料は広告費に連動して増えるため、広告運用を内製化することでコストを削減し、予算をより効率的に使うことができます。
また、外部の広告代理店とのやり取りにはコミュニケーションコストも掛かりますが、ハウスエージェンシーや自社内でコミュニケーションが完結できれば業務効率化も促進されます。
■デメリット
【広告の企画や制作に関する知識が少ない】
ハウスエージェンシーを立ち上げたばかりの時期はマーケティングに関するノウハウが自社内に蓄積していないかもしれません。しかし、広告や企画の質は運用をしていく中で少しずつ向上させていくことが可能なため、時間とともに解決できると思われます。
【人材採用・育成にコストや時間が掛かる】
ハウスエージェンシー内で人材が足りない場合は採用や育成にそれなりのコストと時間が掛かるということを念頭に置いておく必要があります。マーケティングに関わるフェーズの大部分を外部へアウトソーシングしている場合は人材採用や育成は不要であるため、関連するコストや時間の負担はありません。
まとめ
今回は銀行がハウスエージェンシーを持つ理由やメリットなどについて解説しました。
銀行のマーケティング業務はアウトソース型からインハウス型へ移り変わり始めていますが、その背景には世の中のデジタル化が進み、従来のビジネスモデルからの変革が求められていることが影響しています。また、ハウスエージェンシー内で運用していくことで決断のスピードを上げ、時代の変化や行動変容にも対応しやすくなり、コストパフォーマンスやスピード感においてメリットが多いこともご理解いただけたのではないでしょうか。また、ハウスエージェンシーの設立をせずとも、自行のマーケティング部署をインハウス化し、広告運用を内製化するのも一つの手段としておすすめしています。ぜひ、これからの銀行のマーケティングの参考にしてみてください。
今後も銀行業界のトレンドやDXの取り組みなどについてご紹介していきます。