みなさん、こんにちは。メンバーズルーツカンパニーの広報担当です。
今回は、地方銀行の事例から少し離れ、金融におけるWeb3.0が及ぼす影響について調査をしてみました。
Web3.0が広まることによって海外、国内それぞれで経済や社会にどのような動きが出てきたのか。先々の私たちの生活にも変化が出てくることが感じられる内容となっています。
銀行業務に深く関わるものでもありますので、世界の動きなどをウオッチしつつ、今後の事業の方向性の参考にしてみてはいかがでしょう。
新たな感覚で経済を動かし表現できる世界へ!
昨今、ITに関する話題では「Web3.0」や「ブロックチェーン技術」等の単語を耳にすることも多くなったのではないでしょうか。
まず、最初にWeb3.0は、“次世代の分散型インターネットの概念”だということを押さえておきましょう。そして、今後はWeb3.0が広まっていくことによって、ブロックチェーン技術を活用した社会に変化していくことが見込まれている…現在はそんな段階です。
Web3.0以前のWeb2.0は、SNSを中心とした双方向コミュニケーションのインターネットが広まった時代でした。
各SNSが社会に大きな影響を及ぼした(している)事は、私たち自身も体感してきたのではないでしょうか。
そんなWeb2.0時代における課題となっていたのは、ビッグデータが価値を生み出すことによって起きる個人情報の悪用やSNSのプラットフォーム側に表現を規制されてしまう点です。その課題をクリアするために、2018年から現在に至るWeb3.0では、データの集中や改ざんが不可能なブロックチェーン技術を活用する流れとなっていきました。
そうしてこれまでは一部の企業がデータを保有している “中央集権型”だったのに対し、これからは個人がデータを保有できる“非中央集権型”へと移行していきます。
非中央集権型になることで、特定の企業によるデータ管理もなくなり、個人や組織、資産が分散的・自律的に動き回る経済活動が実現可能となります。
人種や国境を超えてサービスを利用できるようになり、グローバルな経済圏が展開されて行くことも期待されています。
アメリカではバンクレスな若者が出現!
海外ではWeb3.0の流れに合わせ、すでにライフスタイルにも変容を及ぼしているケースもありました。
なんと、アメリカでは銀行口座を持たない若者が急増しているとのこと。
暗号資産のような独自の通貨によって成り立つ「クリプトエコノミー」という新しい経済圏が形成され始めています。
このような一部の若者たちは仮想通貨を現金化して買い物をするような生活をしており、現金を預ける銀行を必要としないライフスタイルを実現しています。
参考:アメリカで銀行口座を持たない若者が急増中。web3時代、世界の“お金観”はこう変わる
シンガポールの企業が貿易金融でTISと業務提携
国内大手のシステムインテグレーターTIS株式会社は、2021年12月よりシンガポールのContour Pte. Ltd.と資本・業務提携を開始しました。
Contourは、ブロックチェーン技術を用いた貿易金融サービスを展開しており、世界の大手15銀行がContourのプラットフォームを利用し、50ヵ国以上で取引を行っています。
TISはTrade Finance(貿易金融)の分野において、ブロックチェーン技術を活用したソリューションを提供するとともに、Contourの持つTrade Financeの業務知識、ノウハウの取得を通して日本の銀行・企業の貿易業務のDX化に貢献。これまで貿易業者は、輸出入に関する多くの業務をFAXやメールなどで行っており、それをContourが提供するブロックチェーンプラットフォーム「Corda」を利用することで複雑な書類のやり取りをデジタル化し、シームレスでセキュアな取引が可能となり、業務の効率化に繋げられるようです。
「Web3.0」で日本の金融はどう変わる?
そして、日本でもWeb3.0を実践する社会づくりに向けて動き始めています。経済産業省は2022年7月に部局横断チーム「大臣官房Web3.0政策推進室」を設置。
同年12月に「Web3.0事業環境整備の考え方~今後のトークン経済成熟から、Society5.0への貢献可能性まで~」をまとめた資料を産業構造審議会の経済産業政策新機軸部会に提出。
直近2~3年は、Web3.0事業を進めていくための法整備を注力する方針とのこと。
また、省庁に限らず各金融機関でもブロックチェーンを活用した取り組みは行われており、それぞれWeb3.0に向けた事業の展開が始まっています。
個人向けの金融商品等の多様化によって投資や経済が活性化することを見込んだ動きといえます。
参考:Web3.0事業環境整備の考え方 / 2022年12月16日大臣官房 Web3.0政策推進室
デジタル資産プラットフォームをナショナルインフラに拡大
三菱UFJ信託銀行は、2022年12月に、次世代のデジタル資産プラットフォームとして開発・提供を進めている「Progmat(プログマ)」をナショナルインフラとして拡大させていくことを発表しています。
三菱UFJ信託銀行は、2016年の段階ですでにブロックチェーンの可能性に注目しており、デジタル企画室(旧Fintech推進室)を立ち上げ、2020年春の改正金商法の施行を踏まえて、いち早くデジタル証券(セキュリティトークン)プラットフォーム「Progmat」の開発に取り組んでいました。
今後はさらに、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行、三井住友ファイナンシャルグループ、SBI PTSホールディングス、JPX総研、NTTデータの7社にて、2023年9月に「Progmat」の開発・提供のための合弁会社設立を予定。スタートアップ企業としてデジタル証券市場の拡大と事業拡大を進め、将来的には株式公開を目指すとのことです。
参考:三菱UFJ信託、デジタル資産基盤「Progmat」をナショナルインフラに拡大──7社で合弁会社設立へ | coindesk JAPAN | コインデスク・ジャパン
Web3.0を活用した多角的な取り組み
ネット銀行や私設取引システム運営、ブロックチェーンなど新しい領域での事業開発に強みを持つSBIホールディングス株式会社では、上記の三菱UFJ信託の合弁会社設立に参画している事も含め、さまざまな分野におけるWeb3.0への取り組みを展開していました。
2022年には異なるブロックチェーン間において高い相互運用性を持つことを特長とする、スマートコントラクト言語「Daml」を開発している米Digital Asset社に出資し、合弁事業会社の設立を進めています。
その他、NFT(代替不可能なデジタルデータ)を取引できるプラットフォームの社会実装の取り組み、デジタルスペース分野の発展を見据えたeスポーツ分野への参入、ブロックチェーン技術を活用したプレミアム付商品券で地域社会の活性化を実現するなど、Web3.0が作る未来へ繋ぐ事業にも幅広く取り組んでいます。
参考:WEB3.0関連事業-非金融事業|事業内容|SBIホールディングス
まとめ
2018年よりWeb3.0の時代と言われていますが、日本での対応は始まったばかりです。
現段階では法的な整備やインフラが追いついていないことを鑑みると課題も山のようにありますが、デジタル技術や金融業界に携わる私たち一人ひとりがWeb3.0への理解を深め、国や社会の方針とのバランスを取りつつ、足並みをそろえていくことが重要です。
今後も金融業界の潮流やDXに関する取り組みなどをご紹介していきます。