海外銀行Webサイトから考える、地銀変革の手がかり ~アンプクア銀行~
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海外銀行Webサイトから考える、地銀変革の手がかり ~アンプクア銀行(Umpqua Bank)~

こんにちは。メンバーズルーツの三角です。

普段はWebディレクターとして、地方銀行様のWebサイトやアプリの分析基盤構築~改善施策立案・画面設計を担当しています。

地方銀行を支援している身として、また一人の地方出身者として、地銀は今の社会の影響をもろに受けており、顧客接点や事業そのものまで変革が迫られている厳しい業界だと思っています。

そんな地銀は、地域に根ざす企業としてこの先何を目指していくべきなのか。それを体現するために、顧客との重要接点であるWebサイトやアプリではどのようなコミュニケーションをとるべきなのか。

本記事では海外銀行のWebサイトから、銀行としての考え方(戦略)や伝え方(コミュニケーション)を考察し、今後の日本の地銀変革の手がかりを探していきたいと思います。

調査の背景

特に海外の銀行は業種問わずプレイヤーが無数に存在していて顧客の奪い合いも激しく、その厳しい環境下で企業として存在しつづけられている銀行にはその提供価値や独自性など何らかの成功要因があると考えています。

日本と海外とでは顧客行動特性に大きく差はありそうですが、「既存の銀行業からどのように変革すべきか」や「競争優位性を構築するために例えばどんな方向性が考えられるか」などこれからの地銀がとるべき戦略やコミュニケーションの参考にできる事例も多いのではないか、という仮説を持って調査しました。

今回の銀行 ~アンプクア銀行(Umpqua Bank)~

アンプクア銀行は、アメリカ西海岸を中心に展開しているアメリカの地方銀行です。
2017年に行員とチャットで相談できるサービスを開発するなど、デジタル活用に先駆的にチャレンジしている地銀として今回ピックアップしました。
(今回調査したアンプクア銀行Webサイト https://www.umpquabank.com/

TOPページ構成の解説

日本国内の銀行TOPページは個人顧客向けの訴求から始まることが多い印象ですが、アンプクア銀行のTOPページは個人向けに対象を絞らず、個人/法人の双方にとってのポータルとしての役割を果たしていました。

特徴的なのがその情報設計で、序盤は法人向けの訴求から始まり、個人向けの訴求はページ下部に設置されています。
今の国内の銀行ではあまり見ないような構成ですが、売上比率や注力領域が個人向け事業から法人向け事業に転換していけば、今後数年で法人向けの訴求に重きを置く銀行も増えてくるかもしれません。

キービジュアルの解説

TOPページのキービジュアルではキャンペーンやサービスの訴求をするのが一般的ですが、アンプクア銀行は地銀としての存在意義や姿勢、その実現のために提供している価値が分かるようなメッセージをキービジュアルに設定することで、地域社会に寄り添うパートナーであることをTOPページ訪問ユーザーに想起させています。

また、キービジュアルの遷移先では、顧客区分ごとにお客様の声を紹介し、地域企業への支援内容や地域社会への貢献がうかがい知れるようなコンテンツを掲載しています。

このようにWebサイト内で最も閲覧数が多いであろうTOPページ最上部で、地域社会に根ざす地銀としての存在意義(パーパス)や提供価値(バリュー)を伝えることで、顧客からの共感を獲得し、ブランド価値を向上させているといえます。

情報設計の解説

新着情報や関連情報などは掲載せず、主要サービスの詳細リンクとCTAエリアのみで顧客を迷わせない設計になっています。TOPページはあくまでも新規顧客をスムーズに関心のある情報に受け渡すためのハブとして位置づけ、シンプルな構成にしていると推察されます。

また、一般的に法人顧客は個人顧客に比べて取引開始までの検討期間が長く、単価も比較的高く、Webサイト訪問者は決裁者本人でないことが多いことが特徴です。そのため、個人顧客向けで成果が出やすいキャンペーン情報や新規コンテンツなどの興味を引くような即効性のある訴求ではなく、時間をかけて慎重に情報を発信することで信頼感やブランド価値の向上を目指しているのかもしれません。

まとめ

今回調査したアンプクア銀行は、”銀行”といえば日本人が一般的にイメージする預金の受け入れや資金の貸し出しなどの従来の銀行業でなく、地域社会を支援するパートナー企業としての印象が強いと感じました。

アンプクア銀行TOPページにおける法人向け訴求のように、今後注力したい事業や獲得したい顧客層に合わせてメッセージや情報を制御することで、企業としての姿勢が明確になり、顧客からの共感促進や競合他社との棲み分けにもつながっていくのだと思います。

地銀の変革を考えるにあたっては、常に最新技術やトレンドを追うための情報のアンテナを張ることで今までにない新たな視点を取り入れ、自行の状況に当てはめるとどう転用できるかを考えることが必要です。
地銀DX Lab.では今後も国内地銀だけでなく、海外銀行や異業種から幅広く情報を収集・考察し、コンテンツとして発信していきます。

執筆 = 三角恭平

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