みなさん、こんにちは!フォーアドカンパニーの広報担当です。
今回は、短期プライムレート上昇による影響や動向について調査してみました。日本銀行(日銀)のゼロ金利解除とともに変動金利引き上げの公表が続いている中、その変動によって銀行が受ける影響や取るべき対策についても解説していきます。
公表が続く銀行の短期プライムレート引き上げ
日銀のゼロ金利解除にともない、短期プライムレートの引き上げの公表をする金融機関が増えました。
これにより銀行が企業や個人に貸し出す際の金利も引き上げられ、経済全体にその影響が広がっています。メガバンクが短期プライムレートの引き上げを公表したことに続き、地方銀行(地銀)やネット銀行もその後に続いています。
短期プライムレートの引き上げは、特に変動金利型のローンを利用している企業により大きな影響を与える可能性があります。返済金額の増加のインパクトを考慮し、その対策として借り換えや返済プランの見直しについて考える顧客が多くなるかもしれません。こうした状況に銀行はどのように対応すべきかを考えていきましょう。
短期プライムレートとは
最初に短期プライムレートについて簡単に説明します。短期プライムレートは、銀行が信用力の高い優良企業に対して短期間(1年以内)の資金を貸し出す際に適用する基準金利のことです。日銀が金利政策を変更すると短期プライムレートもそれに追従して変わることが一般的です。
短期プライムレート上昇の要因
現在の短期プライムレート上昇には、2020年以前の長期的な経済の低成長と金融緩和政策の継続が影響し、大きな背景を形作っていました。
そして、2024年となった今、私たちも実感しているように日本国内でも輸入物価の上昇やエネルギー価格の高騰が続き、消費者物価指数が上昇しています。長らく続いていたデフレ傾向からインフレへと転じており、日銀もこのインフレの持続性を注視して金融緩和の効果やリスクのバランスを見直す動きが始まっています。
このように短期プライムレートの上昇はインフレの抑制と経済の安定を目的としたものであり、日銀はこれまでの超低金利政策から段階的な修正を進めています。完全な金融引き締めではありませんが、インフレ抑制と経済成長のバランスを取るため、引き締めの必要性が高まったことが大きな要因となっています。
住宅ローンにも影響する?
短期プライムレートは一般的には企業向けの金利ですが、変動金利型の住宅ローンを利用している個人の顧客にも影響を与えることがあります。(固定金利型の住宅ローンは契約時の金利が一定であるため、短期プライムレートの変動には影響を受けません。)住宅ローンは銀行が融資や預金などの金利を決める際の基本となる“基準金利”に連動して金利が変動するので、銀行が基準金利の引き上げをしない限り金利も変動しない仕組みですが、基準金利の引き上げがあれば毎月の返済額は増加します。そしていま、各銀行が基準金利を見直すと発表しているため、変動金利型の住宅ローンを抱えている個人顧客は家計の負担が大きくなる可能性があり、返済額の増加から借り換えや返済プランの見直しを検討する顧客が増えることを銀行側は考慮しなくてはなりません。
銀行が直面するリスクとその対策
では、短期プライムレートの引き上げによって銀行にはどのようなリスクが発生し、また対策の手段には何があるかを考えていきましょう。
■想定されるリスク
【貸出先の返済負担の増加】
短期プライムレートの上昇によって変動金利型のローンを利用している企業や個人の顧客は利息負担が増加します。特に財務状況が不安定な企業や住宅ローンを活用している個人の場合は可処分所得が少なくなることで返済困難に陥るリスクが高まり、返済金の延滞や貸し倒れの増加に繋がる可能性があります。
【資金調達コストの上昇】
短期プライムレートが上がると銀行の資金調達コストも増えます。銀行は預金者からの預金や短期の借入れでお金を集めるため、短期プライムレートが上がると他行からお金を借りる際のコストが高くなります。
資金調達コストが増加することで利益が減る可能性がありますが、銀行がこのコスト増加をカバーするために貸出金利を上げてしまうと今度はそれによって借り手の減少に影響することもあります。
【市場リスクの増大】
短期プライムレートの上昇により金利が高くなると、債券価格が下落します。銀行は多くの債券を保有しているため、債券の価格が下がると銀行の資産価値が減少するリスクがあります。特に、長期の固定金利債券は価格が大きく下がる可能性があり、銀行の持つ資産の総額が減ることになります。それが経営に響いてくれば結果として貸出金利の引き上げや手数料の増加など、顧客に対するサービスの質が低下することがあるかもしれません。
【競争環境の変化】
金利が上昇すると貸出金利も上がり、顧客がより安い金利を求めて他の金融機関に流れる可能性があります。特にオンラインサービスが充実していたり、低い金利で貸出を行うネット銀行や外資系銀行との競争が激化する可能性があります。これに対処するために金利を引き下げると収益率が低下するリスクが伴います。
■銀行がとるべきリスク対策
【新しい商品の提供】
銀行はさまざまなローンを扱っているため、新しい商品の提供も一つの対策です。今回影響があるのは、金利が上がれば返済額が増えてしまう「変動金利型」ですが、それ以外にも、一定期間固定金利が適用され、その後変動金利に移行する「固定期間選択型」や特定の条件を満たした場合に金利が軽減される「金利優遇型」などがあります。複数の選択肢があれば、顧客は自分のリスク許容度に応じた選択が可能となり、金利変動に備えることができます。
【借り換えや返済プラン見直しのサポート】
金利の上昇に合わせて顧客の返済負担の軽減についてアドバイスをしたり、サポートをすることも重要です。借り換えや返済プランの見直しの提案によって顧客の置かれている状況に合わせた新たなプランを選ぶことで以前よりも低い金利のローンに乗り換えることができれば毎月の返済額や総返済額を大幅に削減できます。
このようなサポートは顧客の経済的負担を軽減するとともに顧客満足度や信頼を高められるため、心理的にも良い影響が与えられます。
【顧客サポートシステムの活用】
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やコロナ禍で対面以外のサポートツールを開発した銀行も多いのではないでしょうか。コロナ以降は顧客向けの相談窓口以外にもオンラインシミュレーションツールの活用も取り入れられるようになってきたため、サポートツールとして積極的に活用することを推進してみてはいかがでしょう。ツールを使えば顧客が窓口まで行く負担を無くすこともでき、自力で計算をする事も無く手軽に返済状況を把握できるメリットがあります。
【リスク管理の強化】
何よりも懸念されるのが、貸し倒れのリスクです。金利上昇のタイミングで借り手が返済困難に陥るリスクが特に高まるため、銀行側はローン審査をより慎重に行っていきましょう。一般的な手段ですが、保証会社の利用や団体信用生命保険の加入はリスク軽減に繋がるため、保証制度への加入は必ず勧めましょう。リスク管理を強化し、返済能力の判定や将来に渡って安定した返済が可能かどうかを厳しくチェックする必要があります。
メガバンクや地銀などの動向をチェック
実際の各銀行の短期プライムレートの引き上げ利率や基準金利についていくつかの銀行を確認してみました。
メガバンク3行は、0.15%の引き上げで新利率は1.625%(旧利率: 1.475%)です。変動金利の基準金利の見直しについては、当記事作成の9月24日時点では「基準金利を見直します。」という内容のアナウンスのみなので、具体的な金利は月末の発表を待っている状況です。
地銀も短期プライムレートは殆どが0.15%引き上げとなっていますが、ネット銀行では0.1%というものもありました。特に地銀やネット銀行では新たな利率もそれぞれ異なっていますので、各行の最新のお知らせをチェックしながら動向をチェックしてみましょう。
■メガバンク
参考:
三菱UFJ銀行 短期プライムレート
三菱UFJ銀行 【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて
三井住友銀行 短期プライムレート
みずほ銀行 短期プライムレート
みずほ銀行 【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しのお知らせ
■地銀
参考:
横浜銀行 住宅ローン基準レートの見直しについて
千葉銀行 無担保ローン(変動金利)の基準利率見直しについて
静岡銀行「短期プライムレート」の改定を実施
静岡銀行 住宅ローン変動金利の標準金利の見直しについて
福岡銀行 短期プライムレートの改定について
群馬銀行 円預金金利および短期プライムレートの引上げについて
■ネット銀行
参考:
楽天銀行 円預金金利および短期プライムレートの改定について
住信SBIネット銀行 金利のご案内 金利改定履歴
まとめ
今回は短期プライムレート上昇による影響について解説しました。
金利の変動など短期プライムレート上昇によって銀行側も焦りを感じる局面ではあるものの、冷静にリスク対策について戦略を検討する必要性についてご理解いただけたのではないでしょうか。変化の激しい時代の中で銀行の在り方も変わり続けているため、変動に対応した商品提供や顧客のニーズに応えられる体制を整えながら新規顧客の獲得に挑んでいきましょう。また、銀行が広告を売ることができるようになったというのも時代の変化を象徴しています。リスクをチャンスに変える施策として広告出稿による顧客獲得も選択肢に入れ、金利上昇対策として取り組んでみてはいかがでしょう。
今後も銀行業界のトレンドやDXの取り組みなどについてご紹介していきます。