株式会社西日本シティ銀行様は、福岡県福岡市に本店を置き、特に福岡県を中心に店舗を展開する地方銀行です。
「ココロがある。コタエがある。」をブランドスローガンに総合力No.1の地域金融機関を目指されています。
そんな株式会社西日本シティ銀行様は2020年4月に新たにデジタル戦略部を立ち上げ、そして2022年4月からはデジタル広告内製化の取り組みに着手。
その背景にはどのようなことがあったのか。パートナー企業であるメンバーズルーツカンパニーとの協働。そして取り組みから1年以上が経過した今は?
時代の変化に適応し、チャレンジを続ける地方銀行の成功事例をご紹介します。
〈お話を伺った方〉
株式会社西日本シティ銀行 デジタル戦略部 調査役 竹森 寛和さま(写真左)
広告代理店からの中途入行。デジタル戦略部立ち上げ早期からのメンバーで、デジタル広告内製化プロジェクトの責任者として総指揮を執る。
株式会社西日本シティ銀行 デジタル戦略部 谷川 隼人さま(写真中央)
EC企業からの中途入行。デジタル業務における幅広い知識を持ち、主にデジタル広告内製化における実務業務を担当。
株式会社メンバーズ メンバーズルーツカンパニー プロデューサー 田中 秀和(写真右)
本プロジェクトのプロデューサー。同行のデジタルUI/UX改善や成果型運用、取引企業のDX支援などを幅広く担当している。
株式会社メンバーズ AS3本部SP室 島村 拓郎(オンラインで参加)
メディアプランニング、運用広告の改善など幅広い分野の業務に携わり、本プロジェクトでは主にデジタル広告内製化人材の育成を担当。
※本文中は敬称略とさせていただいています。(肩書きは取材時点)
(取材日:2023年6月2日/聞き手:ジュークボックス 吉田 秀典)
デジタル広告内製化へのきっかけ
まずは、デジタル戦略部について教えてください。
西日本シティ銀行 竹森:デジタル戦略部は2020年4月に当行が新たに立ち上げた部署で、主に銀行の営業に関わるデジタル戦略を担っています。当時からお客様との接点がデジタルに移行してきていて、その接点の部分を強化するというものでした。
立ち上げ時からデジタル広告の内製化という話はあったのですか?
西日本シティ銀行 竹森:その当時は全く無かったですし、考えてもいませんでした。広告代理店にご尽力いただきながら、一緒に業務を進めていましたので。
そういった状況から、どのような経緯で内製化へと進んでいったのですか?
西日本シティ銀行 竹森:まずは、あるWeb広告の媒体が「こんなクリエイティブの広告を出せば費用対効果が上がりますよ」「広告アカウントの設定の仕方はこうしたほうがいいですよ」といった情報を広告代理店経由ではなく直接くれるようになって。それで、広告代理店にその媒体ともっとコミュニケーションを取って進めてほしいという話をしたのですが、多数の媒体を運用する中で1媒体にリソースを割けない事情もあるようで、思うように連携が進みませんでした。
それと、当時Web広告費がかなり拡大していて、広告代理店に支払う手数料もそれに比例して拡大していたのですが、広告代理店からのアウトプットが金額に合わないと思うようになりまして。
実は私、前職が広告代理店の営業でWeb広告の経験もありましたので、だったら自分たちでやってみるのもありじゃないかという思考になったんですね。そんなタイミングの時に、横にいる谷川が中途採用で入行してきまして。
彼は「グーグルアナリティクス」というグーグルの分析ツールを前職で触っていて、広告運用はやったことはなかったのですが非常に頭の回転が早いのと、Web用語に対する理解度が高かったので、彼がやってみたらできるんじゃないかと思って、直接情報をくれた先程の媒体の広告を試しに自社でやってみたんですね。そしたら、2ヶ月目でCPA(顧客獲得単価)を守りながら獲得件数を倍増することが出来て。そこから急激に内製化という話が加速しました。
メンバーズ 島村:ちょっと余談っぽくなるんですが、広告代理店が手数料型にしているのは別にあんまり理由はないんですよね。実際に報酬というか、どれだけ広告代理店が稼働しているかというのと特に整合性はなくて、従来型のビジネスで代理店が中間に入るということで手数料型が運用型広告にも踏襲されているというだけの話で。金額が増えれば増えるほど、非合理性が出てきてしまうというのは構造上あるんですよね。
メンバーズルーツ 田中:どうしても広告代理店目線でいくと、効果のある媒体ばかりに注力してしまうんですよね。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で、銀行とのユーザー接点は対面から非対面に大きくシフトしています。そのため、今後はデジタルマーケティングにおいても、各媒体の複合的な活用が重要になってきています。
谷川さんはこのチャレンジについて、「行けるかな」といった手応えみたいなものはありましたか?
西日本シティ銀行 谷川:全然ですよ。最初は不安だらけでした。でも、メンバーズさんという駆け込み寺のような存在のおかげで、色々とアドバイスをもらって、なんとか結果を出すことが出来ました。
メンバーズさんとの接点は既にあったのですか?
西日本シティ銀行 竹森:メンバーズさんにはデジタル領域のUI/UX改善※や分析等を以前からお願いしていて。
メンバーズルーツ 田中:御行がデジタル戦略部を立ち上げられたタイミングで、ちょうど竹森さんが入行されたぐらいからなので、お付き合いとしては4年目になりますね。
※西日本シティ銀行の内製UI/UX改善の取り組みについてはこちらの記事で詳しくご説明しています。
内製化プロジェクトの発足
初の試みで結果が出ました。ここからどうやってデジタル広告内製化が本格的に進んでいくのですか?
西日本シティ銀行 竹森:まずは広告代理店に、自社で結果を出したことを伝えつつ、もっと結果を出して欲しいという話をしたのですが、それでもあまり変化がみられませんでした。そこで、メンバーズさんに相談して「デジタル広告内製化に向けて本格的に走り出したいから、銀行内のメンバーの育成と広告運用など内製化のサポートをお願いしたい」という話をさせてもらいました。
パートナーにメンバーズさんを選ばれた理由を教えてください。
西日本シティ銀行 竹森:内製化というのは本当に信頼できるパートナーとしかできないんですよね。メンバーズさんはデジタル領域のUI/UX改善等で成果を出していただいていたので、内製化の部分でもメンバーズさんだったら大丈夫じゃないかなというところでお願いしました。
それはいつのことですか?
メンバーズルーツ 田中:2022年の4月ですね。そこから本格的にデジタル広告の内製化支援というカタチでプロジェクト化して始めさせていただきました。
最初はどういったことからスタートされたのですか?
メンバーズ 島村:リプレースありきにしちゃうとリスクもあると思いましたので、1〜2ヶ月かけて現状把握をして、広告代理店のデータや振る舞いを見させていただきつつ、アドバイスをするというのが最初のフェーズでした。その後に、どういったカタチで進めていくべきかをご提案させていただきました。それで第2フェーズは、比較的リスクの少ないプロモーションから内製比率を上げていくというカタチで、少しずつ行員の方が手を動かす機会を増やしていきました。
セカンドオピニオン的に客観的に分析して、そこからのご提案というカタチですね?
メンバーズルーツ 田中:そうですね。ローンの獲得数字を伸ばしたいという目標もあったので、内製化と同時に、広告運用の精度の向上という、両軸でのご支援をさせていただきました。
プロジェクトミーティングはどのくらいの頻度で行ったのですか?
西日本シティ銀行 竹森:先ほどもお話ししましたが、メンバーズさんには他の業務もやってもらっているので、それらを含めると、今も週に3〜4回はミーティングしていますし、その日のタスクを確認する朝会も毎日やっています。
メンバーズルーツ 田中:うちのメンバーに行員さんを含めた“ワンチーム”として運営していますね。
プロジェクトを進めていく中で、大変だったことや課題はありましたか?
西日本シティ銀行 竹森:どうしてもプロジェクトが大きくなっていくと、関わっていく人間が増えていきますよね。それで、メンバーの誰かに伝えたことが実際は共有化できていないということが多々ありまして、情報の共有化という部分が課題として浮き彫りになりました。しかし、メンバーズさんに間に入っていただくことによって改善され、今では内部のコミュニケーションの取り方もいい意味で変わりましたね。
西日本シティ銀行 谷川:私はすごく実務的な話になるんですが、当行のツールが古いものを使っていたため、ファイルの共有のやり取りの部分で、通常なら修正指示した画像を貼り付けるだけでいいところをわざわざテキストにして送る必要があったりとかして、スピード感といった部分でストレスを感じていました。メンバーズさんとのやり取りの中で、当行としてもツール導入に関する意識が高まり、新たなツールを導入するなどスピード感という点でも一定程度改善されてきました。
メンバーズ 島村:今のお話はすごく大事で、環境の部分が伴ってくるかどうかでスピード感が変わるというのは各社さん同じストレスを抱えられていると思います。とはいえ銀行さんは制約が先に立ってしまい、そこに対してなかなか折り合いがつけられないことが多い中で、前進しているということはすごいなと思います。
メンバーズルーツ 田中:私から竹森さんにお聞きしたいのですが、体制面の部分で、いかにして銀行内にデジタル広告内製化チームを作ることを推進されたのですか?今までにない機能であったり業務なので、なかなか難しかったと思うのですが・・・
西日本シティ銀行 竹森:その点については、どれだけ広告代理店に手数料を支払っているか、そして内製化することでどれだけ削減できるかということを、明確に数字で見せたことが一番大きかったと思います。
メンバーズルーツ 田中:なるほど、数字的なエビデンスを可視化できると、説得力が高まりますよね。とはいえ、銀行内を動かすというのは、なかなか推進力・体力が必要ですよね。
西日本シティ銀行 竹森:そうですね。デジタル接点の重要度が高まるとともに、より幅広い打ち手を考えたとき、デジタル広告の内製化は今後は必然になっていくと私は考えています。
完全デジタル広告内製化のスタート
プロジェクトのスタートから1年ちょっと経過しましたが、具体的に数字で現れた成果はございますか?
西日本シティ銀行 竹森:先程お話しした内製化のきっかけとなった媒体の例で言うと、広告代理店にお願いしていた時の7倍の効果が出ました。獲得単価を維持したまま、獲得件数7倍です。
西日本シティ銀行 谷川:そういった成果を経て、実はメンバーズさんのリソースも3名程ご協力いただいて、6月1日からデジタル広告の完全内製化を始めました。
昨日からじゃないですか?完全内製化となると、また別の課題とかも出てくるわけですか?
西日本シティ銀行 谷川:完全内製化ということで、今までと比にならない金額が動くのと、その分媒体も増えるので、どういう風に全体に目を行き渡らせればいいのかというところだったり、広告代理店にお支払いしていた手数料分をどの媒体にどのくらいかけるかという部分も今後メンテナンスをかけていく必要があると思います。広告代理店であれば、ある程度経験則に基づいてやっている部分がある中で、私達はまだ経験が浅いので、そこをどう過去の数字や直近のトレンドから紐付けしていくかということが課題だと考えています。
その点については、メンバーズさんの方からもアドバイスだったり提案をされるんですか?
メンバーズ 島村:我々としては、ある程度行員の方が自走できる状態を作るというのを見据えているので、我々がやり過ぎないようにしつつ、パフォーマンスを出していくということをすごく意識していますね。
因みにですが、他の銀行様もデジタル広告完全内製化といった取り組みはやられていたりするのですか?
西日本シティ銀行 竹森:グループ内に別会社を立ち上げて、そこで私たちみたいなデジタル系の業務をやっている銀行さんは多くあると思いますよ。
メンバーズルーツ 田中:グループ会社の中で広告機能を持っている銀行さんはありますが、御行のように、銀行内のデジタル戦略部という一部署の中でそういった機能を持っているところはまだ少ないと思います。そこでいう柔軟性やコミュニケーション、圧倒的なレスポンスとか、そういった部分を解決できつつ広告を運用できるというのは、とても理想的な体制だと思いますね。
広告代理店にいらっしゃった竹森さんから見て、今回の完全デジタル広告内製化は最適解だと思われますか?
西日本シティ銀行 竹森:正直、やってよかったと思います。まだ1日しか経っていないんですが、広告代理店運用時と比べて数字の落ち込み度が予想よりも少ないので、このまま行けるなという手応えは感じています。
地方銀行としての今後の展望
今後、銀行内の広告機能を活かして、地域の企業様を支援していくといった可能性はありますか?
西日本シティ銀行 竹森:西日本シティ銀行を含めたグループ会社のWeb広告を当部で内製化するというのは正直できると思いますし、さらにはWeb広告で悩まれている当行のお客様の支援や手助けも出来るとは思います。
メンバーズルーツ 田中:収益性とかでなく、あくまでDXにこれから取り組みたい企業のサポートなど、地域の発展を支援する銀行としての価値提供に重きを置きたいということですね。
西日本シティ銀行 竹森:正にその通りです。だから、属人化しないように一つ一つの施策を結論づけて、みんなで知見を貯めていく必要があると考えています。後から入ってきたメンバーにも、論理的な説明をする必要がありますし。デジタルデジタルと言いながら、実は地道なアプローチが多いです。(笑)
メンバーズルーツ 田中:まさに、「ヒューマンタッチ」と「デジタル」の両面での取り組みですね。そのトライ&エラーも含めて、まだチャレンジの過程だとは思いますが、デジタル広告を内製化し知見を蓄え、専門のチームを作って銀行内のDXを推進していく。その取り組みに私たちも協働させていただきつつ、中長期的にはこの取り組みを地元企業に派生させて、持続可能な地域社会の発展とソーシャルインパクトの創出に、引き続き一緒にチャレンジしていきたいと私達は考えています。
西日本シティ銀行 竹森・谷川:ぜひ、よろしくお願いいたします。
メンバーズルーツカンパニーでは、西日本シティ銀行様を始めとした地方銀行さまの伴走型DX支援を通じて心豊かな地域社会づくりを目指しています。
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