こんにちは。メンバーズルーツの山下です。
普段はWebエンジニアとして、金融機関さまのWebサイトの運用業務などを担当しています。
地方銀行を支援している身として、また一人の地方出身者として、地銀は今の社会の影響をもろに受けており、顧客接点や事業そのものまで変革が迫られている厳しい業界だと思っています。
そんな地銀は、地域に根ざす企業としてこの先何を目指していくべきなのか。それを体現するために、顧客との重要接点であるWebサイトやアプリではどのようなコミュニケーションをとるべきなのか。
本記事では海外銀行のWebサイトから、銀行としての考え方(戦略)や伝え方(コミュニケーション)を考察し、今後の日本の地銀変革の手がかりを探していきたいと思います。
調査の背景
特に海外の銀行は業種問わずプレイヤーが無数に存在していて顧客の奪い合いも激しく、その厳しい環境下で企業として存在しつづけられている銀行にはその提供価値や独自性など何らかの成功要因があると考えています。
日本と海外とでは顧客行動特性に大きく差はありそうですが、「既存の銀行業からどのように変革すべきか」や「競争優位性を構築するために例えばどんな方向性が考えられるか」などこれからの地銀がとるべき戦略やコミュニケーションの参考にできる事例も多いのではないか、という仮説を持って調査しました。
今回の銀行~BMOハリス銀行~
BMOハリス銀行は、イリノイ州シカゴを拠点とするアメリカの老舗銀行です。
2021年時点で、アメリカで総資産額が19位(9,980金融機関中)の巨大銀行です。
(参照:U.S. News)
WEBサイト上で、スマホアプリ体験、各業界の専門家とのビジネスマッチングができるなど、デジタル活用に先駆的にチャレンジしている地銀として今回ピックアップしました。
※BMOハリス銀行のURLはこちらなので、確認しながら記事を見ていただけると幸いです。
最適なローンを提案してくれる
金融のプロでもない限り、数ある金融商品の中から自分に合ったものをみつけるのは難しいでしょう。
多くの国内銀行のWebサイトでは、自社のローン商品群の中から、顧客に合った商品を選ばせる場合、目的別カテゴリの中から最適な”商品群”を提示し、その中から最適な商品を選ばせています。
BMOハリス銀行のローンページにおいても、ファーストステップはそれと同じです。
重要なのは次のステップです。こちらのページでは
“Tell us a little more”(もうちょっとだけ教えてください)
と表示されます。
2択で答えられる質問が表示され、それに回答すると、次の2択が表示されます。
2択に繰り返し回答することで、リアルタイムでニーズに合ったローン商品が表示されます。
さらに、商品概要の説明文も書かれているので、簡単に情報を得ることができます。
百聞は一見に如かず。こちらのリンクからその機能を体験してみてください。↓
Apply for Personal Loans or Lines of Credit – BMO Harris
ビジネスマッチングもオンラインで簡単に
当WEBサイトは、個人向けだけではなく、法人向けでも特徴的な切り口を取り入れています。
日本の各銀行、企業もビジネスマッチングのデジタル化を推進していますが、デジタルのメリットでもある、その場で手軽に情報をキャッチアップして比較検討できる、という価値を提供できている企業は少なく感じます。
BMOハリス銀行のWebサイトでは、会員登録などなしで、投資銀行家とのビジネスマッチングを体験することができます。
- 勤務地の州
- 住んでいる州
- 求める職業
これらの質問に答えると、条件の合う投資銀行家を何人か紹介してくれます。
スマホアプリのUI体験
スマホ主流の現代において、デジタルバンキングについても、スマホ主流になるのが必然的です。
スマホアプリを訴求する方法として、多くの日本の銀行では、機能や特徴を画像やテキストで伝えています。
一方でBMOハリス銀行は、WEBサイト上で、BMO デジタルバンキングアプリのUIを体験することができます。
機能や特徴は、端的に情報として列挙されている方が分かりやすいですが、アプリのUXは本来インストールした人にしか分かりません。
それをインストール前のユーザーに体験してもらうことで、利用してみたいと思わせる、BMOハリス銀行ならではの取り組みです。
海外のスマホアプリなので、インストールは不可ですが、こちらの機能はどなたでも使うことができます。UI体験の参考にぜひ、地銀のDXを推進している方々にはぜひ活用してほしいです。
Making a bill payment | Making a bill payment demo
まとめ
今回の調査で、BMOハリス銀行は、個人、法人、富裕層、株主、新規顧客、既存顧客、すべてのユーザーにストレスなくサービスと情報を提供できるように、Webサイトを設計していることがわかりました。
特に、スマホアプリのUI体験ができる機能は、参考にしやすい優れたアイデアです。
地銀の変革を考えるにあたっては、今までにない新たな視点を取り入れることが必要です。
地銀DX Lab.では今後も国内地銀だけでなく、海外銀行や異業種から幅広く情報を収集・考察し、コンテンツとして発信していきます。
執筆 = 山下寛晃